【10月1日 CNS】列車に乗りながら地方劇を鑑賞し、秧歌(中国の伝統舞踊)を踊り、伝統的な版画を刷り、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)の伝統的な絹織物「アトラスシルク」のアクセサリー作りを体験する――。中国では今、こうした地域色豊かな体験が楽しめる「民俗文化列車」が、国内外の観光客から人気を集めている。

車内は東北地方特有の鮮やかな花柄で装飾され、一部には農家の伝統的な暖房設備「炕(カン)」を再現したスペースも設けられている。また、無形文化遺産の手工芸、地方劇などを車内に取り入れ、これまで単なる移動手段だった列車を、乗客が参加して楽しめる「移動する民俗文化空間」へと変えている。

中国最北部を走る代表的な列車が、黒竜江省(Heilongjiang)ハルビン市(Harbin)と漠河市(Mohe)を結ぶ「東北民俗」をテーマにした列車だ。車内は東北地方で親しまれている華やかな花柄で装飾され、一部には農家のオンドルを再現したスペースも設けられている。

運行中には食堂車が「移動文化展示室」に変わり、伝統舞踊の秧歌、切り紙細工、ギョーザ作り、東北地方の伝統的な遊び「ガラハ」などを次々と体験できる。漠河の無形文化遺産の伝承者が、少数民族オロチョン族の民謡や、白樺の樹皮に焼き絵を施す伝統技法を披露することもある。ただし、このテーマ列車は冬の氷雪シーズンに限って運行される。

南に目を向けると、北京市と湖南省(Hunan)張家界市(Zhangjiajie)を結ぶ人気列車でも、季節の伝統行事を車内で楽しめる。今年6月18日の端午節を前に行われたイベントでは、ちまきを釣り上げるゲームや民俗文化に関するクイズが実施され、英国やモンゴル、ロシアからの乗客も参加した。

ロシア人観光客のインナさんは「子どもたちは中国の伝統文化を知る機会になり、ずっと興奮していました。家族で景色を楽しみながら中国の伝統的な祝日の雰囲気も味わえて、とてもよかったです」と話した。

車掌によると、観光シーズンにはこの列車の乗車率が85%を超えることもあり、北京発の普通寝台車は満席になることが多いという。中国西部の新疆ウイグル自治区を走る観光列車「新東方快車」でも、さまざまな文化体験が用意されている。乗客はアトラスシルクのアクセサリーや桑の樹皮を原料とする伝統紙、薬草を使った伝統的な香り袋などを作れるほか、新疆の伝統的な太鼓に触れる音楽体験も楽しめる。

車内では新疆の文化を紹介する講座も随時開かれ、専門家や研究者が地域の歴史や民俗、地理について解説している。華東地方を走る観光列車「大美上饒」は、文化・芸術を気軽に楽しめるのが特徴だ。乗車時間はわずか37分だが、車窓の風景と伝統芸能、お茶を組み合わせた旅を楽しめる。

車内では、弋陽腔や信河乱弾腔、信州道情など、無形文化遺産に登録された伝統芸能が次々と披露される。稲作文化や親子交流、伝統文化を楽しむくつろぎの空間など、さまざまなテーマの車両も設けられている。信州道情の伝承者、林妍含さんによると、列車内で自ら弟子入りを申し出た乗客も複数いたという。

国境を越えて走る列車でも、車内で文化交流が行われている。中国とラオスを結ぶ中国ラオス鉄道では、乗客が無形文化遺産をテーマにした車両で、雲南地方に伝わる民間版画「甲馬」の拓印を体験できる。通路に設けられたアートギャラリーでは約100点の作品を鑑賞できるほか、イ族の「左脚舞」やタイ族の「孔雀舞」を楽しんだり、ラオスの伝統的な糸を手首に結んで幸福を祈る儀式に参加したりすることもできる。

統計によると、今年1~8月に中国の鉄道で運行された観光列車は計2501本。このうち観光専用列車が1387本、観光路線列車が1114本だった。中国各地を走る民俗文化列車では、乗客が実際に手を動かし、歌や踊りに参加しながら地域の文化に触れることができる。移動そのものを観光体験に変える新たな列車の楽しみ方が広がっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News