「チャンヒ」のニックネームで活動する投稿者が、母親の話を基に制作した「キンパZine」(c)news1
「チャンヒ」のニックネームで活動する投稿者が、母親の話を基に制作した「キンパZine」(c)news1

【08月21日 KOREA WAVE】個人の趣味や考えを自由な形式でまとめ、自費で印刷・製本する自主制作誌「ZINE(ジン)」が、韓国の20〜30代の若者を中心に注目を集めている。SNSやショート動画、生成AI(人工知能)といったデジタルコンテンツが氾濫する中、「手で触れられる紙の質感」と「正解のない自由な表現」が魅力として受け入れられている。

「ZINE(ジン)」は、雑誌(Magazine)の語源に由来する小規模な自主出版物だ。決められた判型や文字数、レイアウトのルールはなく、A4用紙を1枚折りたたんだ簡易なものから本格的な冊子まで、文章や写真、イラスト、コラージュなどを自由に組み合わせて制作される。

ハンドルネーム「チャンヒ」さん(26)は、母親の思い出を綴った「キンパ(韓国風海苔巻き)ZINE」を制作した。「同じ街を歩いても、人によって切り取る風景も表現もまったく異なる。『こうあるべきだ』という正解がないのが最大の魅力」と語る。最初は「個人的すぎて誰も興味を持たないのでは」と不安だったが、SNSで紹介すると大きな反響があったという。

また、一人でフランス旅行に出かける妹のために手引書を作ったヌンソルさん(29)は「普段はブログなどを書いていたが、形に残るコンテンツを作りたかった」と話す。企画から製本まで自らの手で担い、「『最も個人的なことこそが最も創造的』という言葉が好き。他人のように華やかでなくても、自分だけの経験や空気感を込めるだけで十分」と充実感をにじませる。

ZINEを直接手に取れるイベントも盛況だ。ソウル市内で先月開かれた独立出版フェア「Not a Book Fair 2」には、会場の定員制限を超える1000人以上が来場。出展した99チームのうち41チームの作品が早期に完売した。

イベントを企画したアート集団「NaN」のモア氏は「急速に消費されるデジタルコンテンツに疲れを感じた人々が、手触りのあるアナログ媒体の直感的な魅力に再び引き寄せられている」と分析する。

韓国では近年、読書や紙の活字を「クール(かっこいい)」と捉える「テキスト・ヒップ(Text Hip)」と呼ばれるトレンドが広がっている。文化評論家のキム・ホンシク氏は「AIが個人の好みや文化を画一化しかねない時代だからこそ、既存のメディアでは取り上げられなかった『個人の物語』を自ら発信するZINEが、新たな文化的潮流として支持を集めている」と指摘している。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News