AI演算能力が中国の雪原高原へ
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【7月20日 CNS】中国西部の高原地帯・青蔵高原に対して、いまだに「タルチョ(経幡)やヤクしかない場所」という古いイメージを抱く西側の人びともいる。しかし、この天然の巨大空調ともいえる高地であり、再生可能エネルギーの集積地でもある地域では近年、データセンターやサーバーラック、サーバー、光ファイバーネットワークなどの整備が急速に進んでいる。豊富なクリーンエネルギーを活用し、高付加価値の演算産業やデジタル経済へと転換する動きが加速している。
牧畜民がチベット語の大規模言語モデルを使ってヤク売買契約書を作成したり、商人が冬虫夏草の真贋判定AIプラットフォームを利用して取引を円滑に進めたりしている。また、衛星・ドローン・地上観測設備を連携させた生態モニタリングネットワークが三江源の「中華水塔(中国の水源地)」と呼ばれる三江源地域を守り、チャルハン塩湖ではカリウム塩生産データの効率的かつ正確な収集が実現している。雪原高原では、AIを活用して経済・社会の発展や人々の日常生活を支える事例が次々と生まれている。その背景には強力な演算能力の存在がある。演算インフラの整備や関連産業の配置が進む中、雪原高原は中国のデジタル化・スマート化戦略に深く組み込まれ、西部地域を支える重要な拠点の一つとなっている。
標高3000メートルを超えるチベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)郊外には、山々に囲まれた巨大なチベット様式の建物が建っている。一見すると伝統建築のようだが、実際にはチベット自治区のテクノロジー企業が運営する大規模データセンターだ。データセンターの電力消費は世界共通の課題であり、サーバーだけでなく冷却設備にも大量の電力が必要となる。しかし、この施設にはエアコンが設置されていない。高原特有の低温で乾燥した空気を利用する「ドライエアエネルギー」技術を採用し、自然の冷風を取り込んで冷却することで安定稼働を実現するとともに、全体のエネルギー消費を約30%削減している。
では排出された暖かい空気はどうなるのか。高原の脆弱な生態系に影響はないのか。このデータセンターでは排熱回収システムを導入し、近隣の温室へ熱を供給している。温室内は一年中温暖な環境が保たれ、温水を好む魚の養殖や農作物の栽培が可能となり、エネルギーの循環利用を実現している。
チベット自治区は自然冷却資源が豊富で空気も清浄なうえ、水力、太陽光、風力発電資源にも恵まれている。そのため、AI向けデータセンター(智算センター)の運営をより環境負荷の少ないものにできる。チベット自治区山南市のヤルンツァンポ川沿いにある「雅江1号」は、チベット初の大規模AI演算センターだ。2万5000平方メートルの太陽光発電設備から供給されるグリーン電力を活用し、すでに1年以上稼働している。第1期計画の演算能力2000P(1Pは毎秒1000兆回の演算能力に相当)がすべて稼働すれば、中国東部地域のAI学習需要約400万時間分を毎年処理できる見込みで、東部地域での電力消費を3億2000万キロワット時削減し、二酸化炭素排出量を28万トン削減できるという。
青海省(Qunghai)では、グリーンAI演算センターの建設に加え、中国の大規模言語モデル「深度求索(DeepSeek)」などと連携したグリーン演算サービス「青海グリーンクラウド」が工場で広く利用されている。このサービスは塩湖産業などの現場に導入されており、塩湖化学工業の生産データをリアルタイムで収集・活用できるようになった。生産工程の可視化や管理プロセスの透明化が進み、工場のスマート化が加速している。これにより、青海省が持つ豊富な塩湖資源の価値もさらに引き出されている。
演算基盤の整備が進むにつれ、高原地域の産業高度化も目に見えて進展している。高原の永久凍土や草地の劣化を監視するAIモデルが開発されたことで、これまで3カ月かかっていた生態データ分析が48時間に短縮された。AI演算センターは自動運転企業による高原向けアルゴリズム開発も支援しており、チベット医学の研究や高原農牧業の品種資源分析にも活用されている。大手テクノロジー企業やデジタル企業も次々と高原地域へ進出し、地元の若者はデータアノテーション担当者などの新たな技術職に就いている。演算基盤は地域発展の「スマートな頭脳」となり、高原経済を「演算能力主導型」へと転換させつつある。
青蔵高原の高標高、低気圧、大きな寒暖差という環境は、中国製半導体の性能検証にも理想的な実験場となっている。今年4月初め、中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)チベット支社による150P規模のAI演算プロジェクトの点灯式がラサ・ハイテク産業開発区で行われた。これは世界初の超高地に設置された大規模AI演算センターであり、中国製AI演算チップが過酷な高原環境でも高い信頼性を持つことを証明した。
現在、かつてはデジタル経済の周辺地域と見なされていたチベット自治区が、「算力珠峰(演算能力のエベレスト)」戦略を掲げ、デジタルチベット建設を積極的に推進している。例えばラサ・ハイテク産業開発区では、デジタル経済関連企業が2900社以上に増加し、年間売上高は4年前の51億元(約1216億1511万円)から79億2200万元(約1889億880万円)へと拡大した。
一方、青海省もグリーン演算産業を省の重点戦略に位置付け、グリーン電力供給、企業誘致、人材育成などの政策を打ち出して産業の長期的発展を支援している。現在、サーバーラック数や演算能力規模は急速に拡大している。
中国の「東数西算」(東部のデータを西部で処理する国家戦略)と、AIがあらゆる産業を変革する流れの中で、雪原高原が持つ演算能力の潜在力は決して小さくない。この演算能力が今後どのように効率的に活用され、さらなる価値を生み出していくのか、引き続き注目される。(c)CNS/JCM/AFPBB News