中国の若者に人気の「造景ステッカー」、日本にも広がる
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【6月11日 東方新報】真っ白な台紙とピンセット、そして細かなステッカーパーツだけで、中国風の庭園や街並みを作り上げる――。そんな「造景ステッカー」が中国の若者の間で人気を集めている。小紅書(Red)や抖音(Douyin)では関連話題の閲覧数が7億回を超え、投稿数も400万件近くに達している。最近では日本の100円ショップでも販売されるようになり、その人気は海外にも広がり始めている。
◾️自分だけの理想の世界を作る
造景ステッカーの遊び方はシンプルだ。利用者は何もない背景台紙の上にステッカーを何層にも重ねて貼り、日本庭園や深夜食堂、ファンタジー世界などの立体的なミニチュア空間を作り上げる。特別な工具は必要なく、ピンセットや手だけで完成させることができる。
市場には、子ども向けの簡単なものから、大人向けの複雑なストーリー性を持つものまで幅広い商品が並ぶ。「屋台街」「スイーツショップ」「インスタ映えする小部屋」などテーマも多彩で、一部の商品には回転やスライドなどの可動ギミックも備わっている。簡単なものであれば30分ほどで完成する。大学生の張雯(Zhang Wen)さんは、「難しい作業がなく、貼り間違えてもやり直せるので気楽に楽しめる」と話す。初めて挑戦した際は20分ほどでミニチュアのスイーツ店を完成させたという。「何もなかった台紙が少しずつ店らしくなっていく過程は、本当に達成感があります」と語る。
SNSには「造景ステッカーの世界では自分が創造主」「海辺の夕日を再現して心が癒やされる」「旅行に行けなくても気分転換になる」といった感想が数多く投稿されている。自分好みの風景を手作業で作り上げることができる点が、多くの若者を引き付けている。
◾️ストレス解消アイテムとしても人気
造景ステッカーは、若者たちの新たなストレス解消法としても注目されている。12万人以上のフォロワーを持つ造景ステッカー系インフルエンサーの「貼貼醤」さんは、「不確実性の高い時代だからこそ、自分でコントロールできる小さな幸せを求める若者が増えている。造景ステッカーは、そのニーズに応える存在だ」と分析する。
作業に没頭することで現実の悩みを一時的に忘れられることに加え、自分の手で作品を完成させる達成感が自己肯定感の向上にもつながるという。また、ステッカーを台紙から剥がす際の「パリッ」という音を好む人も多い。「音が心地よい」「リラックスできる」といった声が寄せられ、制作動画を睡眠導入用に視聴する人まで現れている。
こうした人気は日本にも広がっている。ユーチューブ(YouTube)の制作動画には日本語で「見ていて気持ちいい」「音が癒やされる」といったコメントが寄せられ、日本の100円ショップで造景ステッカーを見つけたという報告もSNS上で話題となった。エックス(X)では、日本のユーザーが完成作品を投稿し、「仕事で行き詰まった時の気分転換になる」と紹介している。
◾️新たな仕事も生み出す造景ブーム
造景ステッカーは、アイロンビーズや家庭用3Dプリンターと並び、中国の若者の間で人気の「手作りホビー」の一つとなっている。その人気の高まりは、新たな職業も生み出している。
中国の文化クリエーティブ関連企業では、「造景ステッカーイラストレーター」や「ミニチュアシーンデザイナー」といった専門職の募集が増えている。独立系イラストレーターが受注するケースも多く、作品1点あたりの報酬は500元(約1万1780円)から8000元(約18万8495円)に及ぶという。このほか、企画立案、型抜き設計、パーツの仕分け作業、ブランド運営など、関連する職種も広がりを見せている。商品企画から販売までを含む新たな産業エコシステムが形成されつつある。
山東財経大学(Shandong University of Finance and Economics)中国経済研究院の董彦嶺(Dong Yanling)教授は、「ミニチュア造景産業は若い消費者層に支えられており、今後も成長が期待できる」と指摘する。参入障壁が低く、初期投資も比較的小さいことから、若者にとって取り組みやすいビジネスモデルになっているという。
小さな世界を作る趣味として始まった造景ステッカーは、いまや新たな産業や職業を生み出す存在へと成長している。その小さな世界の中には、若者たちの創造力や将来への夢も詰まっている。(c)東方新報/AFPBB News