VRで描く古代の女性将軍 北京国際映画祭で女性映画に注目
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【5月14日 CNS】第16回北京国際映画祭「無界∞没入部門」の会場で、1本のVR映画が注目を集めた。観客はVRゴーグルを装着し、3000年前の殷・商時代の戦場へと入り込み、中国で記録に残る最初の女性将軍・婦好(Fu Hao)となって、馬を駆り、戈を振るい、軍を率いて敵を打ち破る体験をした。
この『青銅の女戦神』(原題『封神前伝』)は、没入型の物語表現によって、婦好墓から出土した文物と現代技術を融合させ、観客に古代の女戦神の人生を「体験」させる作品だ。近ごろ、中国では「女性将軍」を題材にした映像作品が相次いで人気を集めており、同作も多くの映画ファンにとって、今回の北京国際映画祭における女性題材映画の見どころとなった。同作はこれまでにも、上海国際映画祭、2025年東京国際映画祭のコンテンツマーケット「TIFFCOM」、第30回香港国際映画・テレビ見本市「FILMART」など、国内外の主要な映画・映像イベントで紹介されている。
程馨(Cheng Xin)さん(仮名)は鑑賞後、「これまでの映画鑑賞は『見る』ものだったが、今回はその中で『生きる』体験だった。婦好はもはや遠い伝説ではなく、血の通った女性英雄になっていた」と語った。こうしたVRによる没入型の表現は、映画祭における技術的な探求を示すだけでなく、女性の視点から歴史の物語を再構築するものとして、観客から高い支持を集めた。
今回の北京国際映画祭では、「新荷NEWHER」女性映画部門も大きな見どころとなった。同部門は著名監督の李少紅(Li Xiaohong)氏が立ち上げたもので、ワークショップ、長編映画支援計画、プロジェクトのピッチングなどを通じ、女性映画人の支援や若手映画の発掘・後押しを行い、多様な視点による映像表現を促している。同部門の選出企画や作品は、現実の生活や個人の経験に焦点を当てたものが多く、テーマや表現の面で、より多様な女性の視点を示している。
新荷NEWHER映画部門の長編映画支援計画の表彰式では、広東省(Guangdong)潮汕市(Chaozhou)出身の女性監督、金鴻(Jin Hong)氏が手がけた映画『我把神仙鑲上天』が特別推薦長編作品に選ばれた。同作は、宗族のしきたりによって祠堂の外に閉め出された女性職人が、割れた茶わんや皿を屋根の神仙像としてはめ込みながら、自らの人生も再びつなぎ合わせていく物語だ。伝統と自分自身の間で揺れ動く女性の葛藤と再生を描いている。金鴻氏は潮汕を出て中央戯劇学院監督学科に合格し、いま故郷を題材にした作品を携えて北京国際映画祭の舞台に立ち、若くみずみずしい創作力を市場に示した。
同時に、映画祭の企画投資部門や審査の場でも、女性映画関係者の参加が広がっている。企画投資部門の最終審査では、著名俳優で監督でもある舒淇(Shu Qi)氏が審査委員長を務め、新進監督の邵芸輝(Shao Yunhui)氏らとともに審査に加わった。舒淇氏は公開交流の場で、映画制作には作風や特色が必要であり、同時に誠実さと情熱も欠かせないと述べた。邵芸輝氏は、優れた作品は特定のジャンルに限られるものではなく、良し悪しの基準は主観的ではあるが、一定の基準線も存在すると指摘した。そのうえで、良い脚本を土台に、作風や特色があるか、より面白いものになっているかを見ると強調した。
北京国際映画祭における女性映画は、歴史性と現実性を併せ持っている。VR部門は技術によって古代女性を「よみがえらせ」、新荷部門はリアリズムと革新的な語り口で現代女性の状況を描く。前者は歴史の厚みと没入感を与え、後者は現在の課題に正面から向き合う。こうした古今を結び、虚実を交差させるキュレーションによって、女性の物語はより強い訴求力と時代性を帯びている。
上映作品の中には、女性をテーマにした欧米映画も複数あり、異なる文化的背景における女性の経験を映し出していた。程馨さんはフランス映画『Miss Mermaid』を鑑賞後、同作は離婚した工場勤務の女性がプロの人魚になろうとする物語だと語った。この人物設定は、アンデルセン童話『人魚姫』における、愛のために犠牲になる伝統的なイメージとは異なる。作品の中の女性像は、自己実現と個人の選択をより強く打ち出しており、この書き換えは、女性の物語が「他者のため」から「自分のため」へと移り変わっていることを映し出している。
北京国際映画祭の期間中、複数の女性題材映画の上映には多くの観客が詰めかけ、制作者による上映後トーク付きの回のチケットは発売開始から1分で完売した。ネットユーザーの「二十二島主」さんは、宋佳(Song Jia)と文淇(Wen Qi)が主演する『余燼』を鑑賞後、雪と氷に覆われた世界で、遺灰の取り違えという誤解をきっかけに2人の女性が出会い、互いに寄り添いながら不器用に歩んでいく姿、女性同士の救い合いがとても胸を打ったと述べた。
業界関係者は、女性題材はもはや単一のジャンルにとどまらず、テーマや表現方法の面で徐々に広がりを見せていると指摘する。新技術の導入は歴史題材に新たな表現空間をもたらし、人物像により厚みを与えると同時に、ステレオタイプな物語の枠組みをある程度弱めている。
殷・商時代の戦場の硝煙から現代都市に生きる女性の暮らしまで、『青銅の女戦神』から『Miss Mermaid』まで、北京国際映画祭は古今東西の豊かな女性像を示した。女性映画は、より開かれ、より活力に満ちた段階を迎えている。技術の力は伝統的な物語に新たな生命を吹き込み、女性部門は新世代のクリエイターに道を開いている。映画はより包容力のある姿勢で、女性たちの光と影の世界を記録し、形づくっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News