【4月1日 CNS】全国両会が北京市で開かれている。政府活動報告の審議や討論の合間に行われる各代表団の公開グループ会議は、地方トップの施政方針をうかがう生きた場ともなっている。今年の会場では、ある興味深い現象が注目された。雲南省(Yunnan)党委員会の王寧(Wang Ning)書記、安徽省(Anhui)党委員会の樑言順(Liang Yianshun)書記、貴州省(Guizhou)の李炳軍(Li Bingjun)省長らが、メディアの前で相次いで「地元PR役」を務めたのである。彼らが紹介したのは、大型プロジェクトや投資誘致政策ではなく、コーヒーや金糸絞瓜、酸湯魚といった地元の特産品だった。

書記や省長が特産品を自ら売り込む背景には、地方経済を支える産業育成の考え方がある。

3月7日、雲南代表団の公開グループ会議で、王寧書記は夜遅くまで原稿を書いていた記者たちに、雲南の小粒コーヒーを薦めた。その味わいについて「コクはあるが強すぎず、香り高いのに苦すぎず、ほのかな果実の酸味もある」と表現し、中国の風土を代表する商品として世界に広がりつつあると紹介した。

中国は長年、世界有数のコーヒー消費市場である一方、生産面では雲南コーヒーが国際産業チェーンの中で主に原料供給の役割にとどまってきた。王寧氏の発言は、雲南がコーヒー産業をブランド化・高付加価値化へと転換させようとしていることを示している。農家の収入を増やす重要な産業として、雲南コーヒーをさらに発展させる狙いもある。安徽省党委員会の樑言順書記も、地元の農産物を積極的に紹介した。3月6日、第14期全国人民代表大会第4回会議の安徽代表団全体会議で、樑氏は記者の質問に答える中で、安徽省宿州市(Suzhou)泗県の特色ある農産物、金糸絞瓜(キンシウリ)を取り上げた。

樑氏は、この瓜が農家の自家消費用から全国的な注目を集める特産品へと発展した経緯を紹介し、「今の消費者は消費意欲がないのではなく、商品やサービスが消費者のニーズに十分合っていないことが問題だ。新しい供給を生み出し、需要を引き出す必要がある」と述べた。

泗県の金糸絞瓜は栽培面積が約1万5000ムー(約1000ヘクタール)、年間生産量は5万トン未満と規模は大きくないが、関連産業を含めた産業全体の生産額は2億2000万元に達し、数千戸の農家の収入増につながっているという。農業に加工や観光などを組み合わせた産業モデルの一例とされている。

地方トップによるこうした紹介には、地域の日常的な生活文化への視点も見て取れる。貴州省の李炳軍省長は、街の小さな飲食店まで話題にした。3月6日の貴州代表団の公開グループ会議で、李氏は貴州の街に広がる食文化について、「しびれる辛さ、豊かなうまみ、酸味と辛みのさっぱりした味わい」と表現し、酸湯魚(淡水魚の酸味のある鍋)などの料理が多くの人に親しまれていると紹介した。

店は小さくても味に定評があり、どの店でも人気店になり得るといった話題も取り上げられた。近年の観光客は有名観光地を巡るだけでなく、その土地ならではの料理を味わうために訪れる傾向も強まっている。貴州の酸湯魚や牛肉粉、羊肉粉などは、こうした食文化を目的とした観光の魅力を高める存在でもある。

全国両会は、国の政策を議論する重要な場であると同時に、外部が中国の発展を理解するための窓口でもある。書記や省長が記者と率直にやり取りすることで、地方の実情や特色が具体的に伝わる場ともなっている。こうした発信からは、中国経済の発展が地域ごとの特色や現場の活力を生かしながら進められている様子もうかがえる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News