【3月29日 東方新報】春節(旧正月、Lunar New Year)が明けたばかりの山西省(Shanxi)大同市(Datong)新栄区では、ある酢の醸造工房がすでに生産を再開している。店には酢を買い求めたり量り売りで打ってもらったりする市民が絶えず訪れ、熟成を重ねる甕入りの老陳酢が、最も素朴な形で新春の味わいを受け継いでいる。

江西省出身の王貝貝(Wang Beibei)さんは大同に長年住んでいる。今年は都合により帰省して年越しをすることができなかったため、わざわざ田源醸造の店舗を訪れ、何種類もの手作り熟成酢を選んで、実家の家族に送る準備をしていた。「山西老陳酢はまさにふるさとの味だ。自分は帰れなくても、このまろやかな味わいを届けたい」と話した。

この「田源醸造」の酢工房は、大同市級無形文化遺産の代表的プロジェクトであり、ブランドは「大同老舗」にも認定されている。100年以上前の味噌や酢を作る小さな工房から、現在では北京市・天津市(Tianjin)・河北省(Hebei)を含む地域に商品を展開する特色食品企業へと発展したが、それでもなお「蒸す、発酵させる、いぶす、こす、熟成させる」という伝統の製法を守り、純穀物醸造と自然発酵にこだわり続けている。

醸造工房に入ると、58歳の胡財(Hu Cai)さんが手作業で酢もろみをかき返す作業をしていた。この道一筋で長年酢造りに携わってきたベテラン職人は、夜が明ける前から持ち場に立ち、20年以上、風の日も雨の日も休まず働いてきた。完全な手作業でもろみを切り返し、酢もろみを管理しながら、手の感覚と経験だけを頼りに温度や湿度を見極める。その作業には少しの気の緩みも許されない。「酢造りは良心を仕込むようなものだ。手間を惜しまないからこそ、いいものができる」と、額の汗をぬぐいながら語った。

工房の外では、現代的なボトリング生産ラインが整然と動いている。一方、店内には地元の市民や各地からの観光客が行き交っている。この酢工房は、伝統技術を土台に、現代的な管理手法を取り入れ、食酢、黄酒、料理酒など30以上のシリーズ商品を展開し、地域の特色ある農業と食品加工を象徴する存在となっている。

近年、この酢工房は周辺の村や町に高品質のモロコシ栽培基地を設け、栽培、加工、販売をつなぐ一連の産業チェーンを築いてきた。小さな酢がめは今や、農村振興をけん引する大きな産業へと育っている。(c)東方新報/AFPBB News