■「手負いの獣」

勝利というものは見方次第だ。

トランプ氏とその政権は、イランの名ばかりの政権交代を目指すことから、ペルシャ湾岸の石油供給を確保することまで、対イラン軍事作戦の目標を次々と発表してきた。

だが、文書上では、イランの核兵器保有阻止、弾道ミサイルと海軍の排除、そして中東における代理勢力の抑制といった中核的な軍事目標が列挙されており、トランプ氏にとっては受け入れやすいものかもしれない。

しかし、そのような目標達成による勝利宣言は、イランにトランプ氏が先に屈服したと見なされる可能性が高い。

米イスラエルの空爆による甚大な被害にもかかわらず、イランはトランプ氏の9日の発言以降、反抗的な姿勢を強めており、湾岸諸国からの原油供給を遮断すると宣言し、対イラン軍事作戦のスケジュールを掌握していると主張するトランプ氏をあざ笑っている。

イラン革命防衛隊(IRGC)は声明で、「戦争の終結を決めるのはわれわれだ」と述べ、イランの国家安全保障責任者アリ・ラリジャニ氏はトランプ氏の警告を「こけおどし」だと一蹴し、トランプ氏の方こそ「排除」されないよう気を付けろと反撃した。

一方、イスラエルにも独自のスケジュールがあり、トランプ氏のコントロールが及ぶ範囲は限られている。長期的な目標と、イスラエルによるイランのエネルギーインフラへの攻撃の両方をめぐり、既に意見の相違が生じている。

トランプ大統領はイランの新指導者選出に関与する必要があると主張しているが、イランでは先週末に選出された新最高指導者モジタバ・ハメネイ師に対する大規模な抵抗の兆しはまだ見られない。

モジタバ・ハメネイ師と政権が生き残れば、米イスラエル共同の対イラン軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦」は物事の本質や深い部分には触れず、上っ面をなぞっただけだったとして「すべての芝刈り機の母」として記憶されるだろうと、ウォルター・ラッセル・ミード氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に記した。

スーファン・センターのクラーク氏は、トランプ氏はさらに危険な状況を残す可能性があると指摘。「IRGCの残党」が核爆弾開発に全力を注ぎ、さまざまな民族集団が中東の中心部で大規模な反乱を起こすリスクがあると述べた。

「新最高指導者がハメネイ師の息子であろうと、他の強硬派であろうと、何が違うのか?」「今のイランは手負いの獣のような状態であり、おそらくこれまで以上に危険だ」と付け加えた。(c)AFP