【三里河中国経済観察】ドイツ首相が訪中 中独協力の「未来の主戦場」を見据える
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【3月17日 CNS】ドイツのフリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)首相は2月26日午後、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)にある宇樹科技(Unitree Robotics)の展示ホールに足を踏み入れると、そこでは次々と場面が切り替わっていた。舞台中央では人型ロボットが中国武術の「酔拳」を披露し、リング上では2台のロボットが対戦デモを行う。組立ラインの脇では、人型ロボットが仕分け作業をこなしていた。人工知能(AI)を実体のあるハードウェアに組み込む「具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)」は、いまや研究室を離れ、産業の現場へと広がりつつある。老舗の工業大国ドイツから訪れた首相にとって、これは単なる企業見学ではない。中国社会科学院の孫彦紅(Sun Yanhong)氏は、ドイツの政府や企業界が中国のデジタル経済の最前線に強い関心を寄せると同時に、そこから協力の可能性を探ろうとしていると指摘する。
ドイツは長年、精密製造で世界をリードしてきた。機械、自動車、産業ソフト、オートメーションといった分野で「インダストリー4.0」を掲げてきたが、アルゴリズムや大規模AIモデルとスマートハードの融合が進む中で、製造業の高度化のリズムも変わっている。具身型AIはその変化の象徴といえる。中国はここ数年、ロボットやスマート製造、AIの実装を加速させ、部品から量産、商用化までを一体で回す産業チェーンを整えつつある。その結果、機械や自動車といったドイツの基幹産業にも競争圧力が及んでいる。統計によれば、ドイツの製造業付加価値は3年連続で縮小し、自動車や機械分野の落ち込みが目立つ。
こうした状況の中で、中国の存在感は一段と増している。昨年、ドイツの対中貿易総額は2518億ユーロ(約46兆4268億円)に達し、中国は再び最大の貿易相手国となった。中国からの機械設備や電気機器、電子・光学製品の輸入は大きく伸びている。中国は単なる市場ではなく、サプライチェーンや産業高度化における重要な結節点となっている。同時に、中国企業は新エネルギー車やスマート製造、バイオ医薬などで価値連鎖の上流へと進出し、ドイツの伝統的強みの分野にも入り込んでいる。
こうした背景のもと、杭州訪問には象徴的な意味がある。メルツ首相は約30社のドイツ企業幹部を伴い、自動車、化学、バイオ製薬、機械製造、循環経済など幅広い分野をカバーした。これは既存の強みを固めると同時に、未来の成長分野を見据えた布石でもある。スマート製造や新エネルギー車の分野では、中独企業が相互に投資や共同開発を進め、産業レベルでの融合が進んでいる。バイオ医薬やハイエンド製造でも同様に、技術や資本の往来は多方向に広がりつつある。
メルツ首相が目にしたのは、ロボットの動きの巧みさだけではない。そこには、未来の製造体系の可能性が映っていた。転換期にあるドイツ産業にとって、中国の未来産業の発展は、もはや外から眺める対象ではなく、自らの戦略に組み込むべき重要な要素になっている。世界が急速に変化する中で、中独経済関係の焦点は単なる貿易規模から、未来の製造のあり方をどう共に描くかという議論へと移りつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News