■狂犬病予防にライフル

小さな教区でキリスト教の教理を教える一人暮らしのカーレラク・リングステッドさん(74)は、歯の状態が非常に悪く、また加齢とともにがんなどの病気のリスクが高まっていることを自覚しているという。

医師の診察はオンラインのビデオ通話でしか行われない。自宅にインターネット環境が整っていない住民は、小さな町役場を利用する。年に一度、歯科医が訪問するが、多くの歯科治療は公的医療保険の対象外だ。

こうした現状について、バンゲンハイム保健相は、主な課題の一つとして「医療従事者の採用と定着」を挙げた。ノルソさんは、医療現場で働くにはデンマーク語の習得が必須であることが、外国人医師による不足の解消を難しくしていると指摘する。

問題に拍車をかけているのは若者の都市への流出だ。カピシリットのような離れた集落では、どこも高齢者の割合が多い。

バンゲンハイム保健相は、グリーンランドの医療制度には約10億デンマーク・クローネ(約240億円)に上る「深刻な予算不足」があることを認める。また「長期的な能力構築、地方サービスの強化、そしてデンマークとの格差を是正するための投資が必要だ」とも指摘した。

公式統計によると、グリーンランドでの平均寿命は男性が69.6歳、女性が73.5歳で、これはデンマークよりも10歳以上低い。

こうした厳しい状況の中、カピシリットのような集落では、病気を防ぐためにあらゆる手立てが取られている。例えば、狂犬病ワクチンを接種している人はほとんどいないが、住民はライフルを常備し、異常な行動を取る野生動物がいれば、いつでも撃てるよう備えているというのもその一つだ。(c)AFP/Florent VERGNES