トランプ氏の「病院船」拒否したグリーンランド、へき地医療に深刻な課題
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【2月25日 AFP】グリーンランド南西部の小さな集落、カピシリットには除細動器(AED)がない。ボートで2時間かけるか、ヘリコプターを利用する以外にアクセスできないこの集落では、心停止は致命的な事態に直結する。
集落の人口は35人。住民のために必要な医療機器の導入を求めている村のリーダー、ハイディ・ノルソさんは「助けが来るころには手遅れだろう」とAFPに語った。
カピシリットが直面しているこの状況は、広大なグリーンランドにおける医療制度の課題を浮き彫りにしている。この問題については最近、米国のドナルド・トランプ大統領も指摘したばかりだ。
デンマークの自治領であるグリーンランドの領有をめぐってかけていた強い圧力は影を潜めたものの、トランプ氏は、安全保障上の理由から同地を米国の管理下に置くべきとの主張を続けている。
21日には、グリーンランドに「巨大な病院船」を派遣することを提案し、そこで「治療を受けられずにいる多くの人に」医療を提供できると主張した。
しかし、グリーンランド自治政府のイェンスフレデリック・ニールセン首相とデンマーク政府は、グリーンランドの無償の公的医療制度を理由に、この提案を明確に拒否した。
ただ、グリーンランドのアンナ・バンゲンハイム保健相はフェイスブックへの投稿で、トランプ氏の発言が同地の「敏感な部分」に触れたことを認め、「多くの市民が、重病を患えば家族や家を離れ、長く困難な移動を強いられる」と述べた。その一方で、「こうした構造的な課題は、外部からの単発的で象徴的な取り組みによって解決できるものではない」とも付け加えた。
西欧諸国に匹敵する面積を持ちながら人口わずか5万7000人のグリーンランドには、5か所の地域病院がある。首都ヌークの病院には全土から患者が訪れる。
しかし、カピシリットの住民35人にとって、医療サービスを享受することは容易ではない。集落にある診療所は人手不足のために、ここ数か月は閉まったままだが、地域外の医療施設を受診するには多額の費用が掛かる。週に一度のシャトル便で首都ヌークへ行くには100ドル(約1万5500円)以上かかり、首都での宿泊費も同程度必要だ。
こうしたことから定期的に検診を受けることを難しく、疾患の発見は遅れることが多い。グリーンランドでは、がんで命を落とす人が多い。高血圧だというノルソさんは、自ら体調管理を行っている。「血液検査を受けるべきだと分かっていても、誰もチェックしてくれない」と40代の彼女は話す。