【3月3日 CNS】国家発展改革委員会はこのほど、「人民日報(Peopleʼs Daily)」に論考を10本連続掲載し、新たな段階に入った中国経済をどう見るか、どう進めるかを体系的に示した。

三里河中国経済観察が注目したのは、そのうち3本が共通して取り上げたテーマだ。市場という「見えざる手」と政府という「見える手」が、いかに強みを補完し合い、協調して力を発揮するかという問題である。「二つの手」は経済学の古典的命題であり、同時に世界的な難題でもある。核心は、資源をいかに効率的に配分するかにある。「第15次五か年計画」のスタートを控えた重要な局面で、この命題は新段階の発展を支える基本ロジックと位置づけられている。

例として挙げられているのが、ここ1年で急速に注目を集めた人工知能(AI)だ。

「現時点で地表最強の動画生成モデルだ」。ゲーム『黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)』のプロデューサー、馮驥(Feng Ji)氏は、話題の新モデル「Seedance2.0」についてそう語った。先日公開されたSeedance2.0は世界的な注目を集め、一部ではオープンAI(OpenAI)やSoraを上回るとの見方も出ている。こうした盛り上がりの中で、中国のAI応用の可能性はさらに広がっている。

Seedance2.0が「地表最強」と称され、春節(旧正月、Lunar New Year)の「お年玉」キャンペーンを通じて騰訊元宝(Tencent Yuanbao)や通義千問(Tongyi Qianwen)、豆包(Dou Bao)といった大規模言語モデルが一般家庭に広がり、さらに智譜AI(Zhipu AI)やMiniMaxなどのAI新興企業が上場して資本市場の支持を得るなど、中国AIの発展には相次いで明るい話題が続いている。

その背景にあるのが、「二つの手」をうまく活用する発想だと論考は指摘する。

市場は「自動調整装置」であり「指揮棒」として、資源をより効率的な分野へと導く役割を担う。あらゆる技術革新は、「何に使えるのか」「誰が使えるのか」という問いを避けて通れない。中国はこの点で独自の強みを持つ。14億人を超える人口、4億人以上の中間所得層、6億200万人に達する生成AI利用者は、巨大な市場需要の基盤となっている。さらに、6200社以上のAI企業が存在し、国有大手やプラットフォーム企業、新興の有力企業が競い合うことで、活発なイノベーション環境が形成されている。

一方、政府は「道案内役」「ルールの守り手」として、市場の機能不全を補い、イノベーションを支える。

AIをはじめとする技術革新は、多額の投資、長い開発期間、高いリスクを伴う。民間資本は短期的な利益を重視しがちで、外部からの技術制限などもあり、企業は多くの不確実性に直面している。こうした状況で、政府の役割は重要だ。企業が踏み込みにくい基礎研究や大型設備投資を支援し、インフラや公共サービスなどの整備を担う。

政府は「人工知能+」行動の深化に関する方針を打ち出し、「東数西算(東部のデータ処理を西部のデータセンターで行う)」プロジェクトで計算資源ネットワークを整備し、国家級のAI応用実証拠点を設け、地方によるAIクーポン発行も奨励している。これらはイノベーションの各段階にある共通課題への対応策とされる。

論考は、政府と市場の関係をより適切にとらえ、「二つの手」が緊密に連携し効率的に機能することが、AIという将来を左右する競争で主導権を握る鍵だと強調する。明確なルールを設けつつも、広い革新の余地を残す。アクセルとブレーキの間で動的な均衡を探る統治の在り方は、「走りながら道を整える」現実的な姿勢といえる。

例えば、中国のOLED(有機EL)パネル産業は約20年で後発から世界首位に追いつき、再生可能エネルギー分野でも急速に拡大し、世界最大級の新エネルギー産業チェーンを築いた。こうした飛躍は偶然ではなく、市場メカニズムと政策誘導を組み合わせ、効果的な市場と積極的な政府の双方が力を発揮した結果だと位置づけられている。「二つの手」の協調は理論上の議論にとどまらない。現場の実践から生まれた知恵であり、「自由に任せること」と「放任すること」は違い、「管理すること」と「締め付けること」も同じではないという考え方だ。

支えているのは、単に「地表最強の動画生成モデル」だけではない。市場で検証され、ルールのもとで成長するイノベーションの生態系そのものだ。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News