【2月26日 CNS】人工知能(AI)が、旅行者に新しい遊び方をもたらしている。

カスタマイズ機器の前で、旅行者が記念写真や氷雪の名所を模したテンプレートを選ぶと、AIが3Dモデルを生成する。わずか3分ほどで、オリジナルの「水晶」風のグッズフィギュアを受け取れる。こうした体験は、ハルビン氷雪大世界(Harbin Ice and Snow World)の「氷雪AIインタラクティブ空間」で提供されている。今冬は同様のAI体験が複数のスキー場でも新たな「人気の立ち寄りスポット」となった。

観光地でAI装置を導入する動きは、表面上は体験価値を彩る技術的演出に見えるが、実際には氷雪産業が「テック志向」へと転換していく重要なサインでもある。

中国の氷雪観光市場は規模が大きく、継続的な成長局面に入っている。中国旅游研究院が発表した「中国氷雪観光発展報告(2026)」によると、2025年の中国の氷雪経済規模は1兆元(約22兆1588億円)を超え、2025~26年シーズンの氷雪レジャー観光客数は延べ3億6000万人に達する見通しだ。

清華大学(Tsinghua University)経管学院スポーツ産業発展研究センター主任の王雪莉(Wang Xueli)氏は取材に対し、北京冬季五輪後、複数の要因が重なって中国の氷雪産業は産業チェーンの整備とバランスの取れた配置が進み、需要側でも構造的な変化が起きたと指摘する。供給と需要が相互に押し上げ合う好循環が形成されつつあるという。

では、AIに代表される新技術が氷雪産業に入ると、消費はどう動くのか。まず、旅行者の体験価値がさらに高まる。スキー場の主要顧客は親子連れで、2000年代生まれや学生層を中心に消費が急増している。利用者の若年化が進む中、滑走そのものだけでなく「新鮮な体験」を重視する傾向が強い。AIなどの技術要素がスキー体験に深く組み込まれれば、安全性や効率、双方向性を備えた楽しさが増し、氷雪スポーツの新しい広がりと普及を後押しするとみられる。

さらに、AIの支援は競技のハードルを下げ、滑走以外の体験も増やすため、スキー場側にとっては消費導線を作りやすい。AI搭載のスキーシミュレーターなどは、雪に触れにくい南方地域の消費者の需要にも応える装備とされる。

次に、氷雪産業の「全体の流れ」を押し上げる効果もある。AIによるデジタル演出から、SOS機能を備えたスマートスキーヘルメットまで、場面の革新が進む中で、主要テック企業がスキー場と深く連携し、国産の氷雪装備は技術面で加速局面に入っているという。報告書によると、氷雪観光関連企業は全国で1万4000社を超え、前年からの伸び率は11%に達した。

ハルビン氷雪大世界の「氷雪AIインタラクティブ空間」は、地元と国内のレーザー技術の有力企業が共同で整備したものとされる。旅行者のジャンプや回転、着地といった動きを記録し、AIが自動で動画を生成する。所要は約15秒で、氷雪という「冷たい資源」を「熱い体験」に変える試みだという。

現在、中国では氷雪分野の特許出願が1万2000件を超え、技術革新が産業の高品質発展を支える中核の原動力になっている。王氏は、技術は大会運営を支える手段や普及の道具にとどまらず、氷雪産業の全体に行き渡る「力を引き出す存在」「効率を高める存在」へと変わり、産業をグリーン化・スマート化・大衆化へ押し上げていると見る。

また、スキー体験にとどまらず新しい業態を育てる上では、政策面の後押しも欠かせない。国家発展改革委員会の担当者は、計画、政策、資金の三つの面から氷雪経済の発展を重点支援し、国家の「十五五」(第15次五か年計画)関連計画にも盛り込むよう働きかける方針を示している。

国レベルで重点分野に位置づけられたことで、各地も地域の特色に応じた政策支援を上乗せし、技術による氷雪産業の高度化や新しい場面づくりを促している。2025年12月には、氷雪産業の振興に特化した地方条例として全国初とされる「七台河市氷雪産業促進条例」が公布され、ビッグデータ、クラウド、AIなど先端技術の活用を奨励し、氷雪産業のスマート化・情報化を高め、デジタル経済との融合を進める方針が盛り込まれた。

産業が成熟するにつれ、雪季をめぐる競争の論理も静かに変わりつつある。政策支援の下、AIなどの技術でサービスや商品の同質化を避けることが、氷雪産業の新たな成長ルートになる可能性がある。

いまや「氷雪ビジネス」は、単にスキーにとどまらない。AIは、氷雪という冷たい資源を動かす重要なてこになり、氷雪経済に強い推進力を注ぎ込んでいる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News