【8月9日 CNS】中国は今、人工知能(AI)の応用にかつてないスピードで踏み出している。

7月31日、国務院常務会議は「『人工知能+』行動の本格実施に関する意見」を審議・承認し、AIを経済・社会の成長を牽引する重要なエンジンとして位置付けた。

会議では、AIの大規模かつ商業的な活用を推進する方針を示した。中国が持つ産業体系の充実、巨大な市場規模、多様な応用場面といった強みを生かし、AIを経済・社会のさまざまな分野で普及させて深く融合させることで、革新が応用を生み、応用が革新を促す好循環をつくる狙いだ。

今回の会議は、単なる技術動向の確認ではなく、今後の国際競争力を見据えた戦略的な取り組みでもある。

科学技術の進歩は常に産業構造を塗り替えてきた。2015年に打ち出された「インターネット+」戦略は、中国から世界的なプラットフォーム企業を次々に生んだ。AIも同様に、先端技術としての側面に加え、幅広い産業に力を与える力を持つ。

現在、中国企業はAIの実用化を急速に進めており、複数の分野で技術突破と事業展開が同時進行している。今年初めに登場した「深度求索(DeepSeek)」は、中国が汎用人工知能(AGI)分野で世界的な競争力を持つことを示した象徴的な事例だ。

中国インターネット情報センターの統計によると、2024年の国内AI産業規模は7000億元(約14兆3030億円)を超え、成長率は数年連続で20%以上を維持している。学者の間では「デジタル経済は『インターネット+』の接続重視の段階から、『人工知能+』による革新主導の段階に入った」との見方が強まっている。

産業の転換点に合わせ、政策も大きく方向転換する必要がある。

AI政策はこれまでも継続的に整備されてきた。2017年には「新世代人工知能発展計画」が策定され、2030年を見据えた指針や重点課題が示された。今年の政府活動報告では、初めて「人工知能+」を独立した章で掲げた。今回の会議は、その路線をさらに具体化したものだ。

中央財経大学(Central University of Finance and Economics)中国インターネット経済研究院の欧陽日輝(Ouyang Rihui)副院長は「これまでは技術の追随が中心だったが、今は技術を現場に根付かせ、産業で成果を出すことが重要だ。『AI+』が産業と深く融合することで、新しい業態やビジネスモデルが次々に生まれるだろう」と語った。

会議は、政府部門や国有企業に先行事例を示す責任を求め、応用場面を開放して技術の実装を後押しする方針も示した。スマートシティ、公共医療、行政サービスなどが先行分野となる見込みだ。北京市では自動運転の試験区域が整備され、深セン市(Shenzhen)ではAIを商業登記審査に組み込む実証実験が始まっており、今後は全国的に拡大する可能性がある。

さらに、会議ではAI推進の重点として、演算能力・アルゴリズム・データという3つの基盤強化を明確に打ち出した。政策支援、人材育成、オープンソースのエコシステム整備も課題に含まれている。また、AI倫理や安全への懸念に対応するため、「柔軟かつ協調的なガバナンス」の方針も提示された。

政策の道筋が整うなか、AIをめぐる新たな競争の波はすでに始まっている。先んじてAIを事業の中核に取り込んだ企業が、次の経済競争のルールをつくることになるだろう。そして、日常生活も急速に進むスマート化によって大きく変わろうとしている。

生産や生活の形を大きく組み替える時代は、すでに加速して訪れつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News