【三里河中国経済観察】ワールドカップ、開催地は粤港澳に決まるのか
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【2月23日 CNS】大規模な国際スポーツ大会は、都市の発信力や存在感を測る指標になりやすい。北京市にとっての五輪、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)にとってのアジア競技大会のように、大会を契機に都市整備や産業育成が加速した例は多い。
中国は五輪、アジア競技大会、ユニバーシアード、ユース五輪など、主要な国際大会の開催実績を積み重ねてきた。一方で、いまだ開催経験がないのがサッカーワールドカップ(W杯)だ。ここに来て、中国の招致をめぐる動きに新たな材料が出てきた。
1月29日、広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)の関係部門は、W杯が世界で最も影響力の大きいサッカー大会であるとした上で、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)が共同で招致を目指すことは、地域の国際的な存在感を高め、都市群の連携発展を促すうえで戦略的な意義が大きいとの見方を示した。広州は、国家体育総局および中国サッカー協会の方針に沿いつつ、国の全体戦略に合致することを前提に、香港・マカオとの連絡や協力をさらに深め、地域のスポーツ分野の連携を推し進めていくとしている。
広州市政府弁公庁が2025年7月に公表した「広州市スポーツ強市建設計画(2024~2035年)」でも、「粤港澳3地域の大会運営経験と国際的資源を生かし、W杯の共同招致を推進する」と明記されていた。そこから半年あまりを経て、担当部門が改めて対外的に言及したことで、関係都市が招致に向けた動きを具体化させる意向を示した形だ。
もっとも、中国のW杯招致は以前からたびたび取り沙汰され、当局が否定したこともある。現時点では、粤港澳大湾区に共同招致の意欲があったとしても、短期的に実現するハードルは高いとの見方が強い。
背景の一つに、開催地の「大陸持ち回り」という考え方がある。2030年大会はモロッコ、ポルトガル、スペインの共催が決まり、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで開幕3試合を行うことも決定している。2034年大会はサウジアラビアが開催地となった。サウジはアジアの国であるため、持ち回りの原則を重視すれば、中国は2038年大会の招致が難しくなる可能性があるという。ただ、現実には共催や開催方式が多様化しており、地理的な「大陸持ち回り」の考え方はすでに意味を失いつつある、という見方もある。
では、粤港澳大湾区にW杯を運営できるだけの基盤はあるのか。参考例として挙げられるのが、広東・香港・マカオが共同で開催した第15回全国運動会だ。三地域は連絡会議、首席連絡官、共同作業チーム、越境の出入境手続きの調整など、新たな運営の枠組みを整え、共同開催の経験を蓄積したとされる。
一方で課題もある。スタジアム要件は国際サッカー連盟(FIFA)が厳格に定めており、たとえば2030年大会では使用可能なスタジアムが14会場必要で、開幕戦と決勝の会場は8万人以上、グループステージでも最低4万人の収容が求められる。粤港澳大湾区では、専門的なサッカースタジアムの数がこうした要件に十分届いていないとの指摘がある。逆に言えば、招致を目指すことが、競技施設を含むインフラ整備を加速させる契機になり得る、という見方もある。
ただし、W杯のような巨大イベントを招致するかどうかは、投資規模や財政負担、都市運営への影響などを含め、慎重な検討が欠かせない。とはいえ、大会には大きな投資が伴い、経済への波及効果が期待できるのも事実だ。浙江省統計局は、杭州アジア大会の2016~2020年の準備投資が杭州市のGDPを約4141億元(約9兆1759億円)押し上げ、同期間のGDPの7.6%に相当すると試算したことがある。
W杯を開催できれば、粤港澳大湾区に経済面の上積みと持続的な国際的注目をもたらし、地域の一体化や都市機能の高度化を後押しする可能性がある。中国はこれまでもアジア大会や五輪などの大規模大会を成功させてきた。サッカーという世界最大の舞台で、粤港澳が中国を代表して「決定打」を放てるのか。今後の動きが注目される。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News