【2月21日 東方新報】中国では政策の後押しを受け、人工知能(AI)を活用した創薬が加速している。地方政府から国レベルまで支援策が相次ぎ、研究開発の進め方や産業構造に変化が広がりつつある。

江蘇省(Jiangsu)が公表した「『人工知能+』行動方案」では、医薬品の標的探索や分子設計、医療機器製造などでAI活用を拡大する方針を示した。合成生物学や低分子薬、オルガノイド評価などに対応する専門モデルを構築し、分子設計やたんぱく質予測、仮想スクリーニングといったツールを中小企業にも開放する。広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)も「『人工知能+』三か年行動方案(2026~2028年)」を発表し、「AI+天然薬物」などの応用基盤整備を進める。

国レベルでは、「第15次五か年計画(十五五)」に向けた建議が「『人工知能+』行動の全面実施」を掲げた。2025年には、工業・情報化部や国家衛生健康委員会などが医薬工業のデジタル・スマート化を推進する実施方案を公表し、医薬分野の大規模AIモデル基盤を整備する目標を打ち出した。政策面からAI創薬を本格的に産業化する姿勢が鮮明になっている。

市場の注目を集めた動きとしては、2025年12月30日に英矽智能(Insilico Medicine)が香港市場で新規株式公開(IPO)を実施したことが挙げられる。上場初日の株価は24.66%上昇し、同年の香港バイオ分野で最大の資金調達額となった。Wind統計データによると、2月3日の終値は1株69香港ドル(約1379円)と14.52%高を記録している。

AI創薬の強みは、データとアルゴリズムを活用することで、新薬開発が抱える高コスト、長期間、高い失敗リスクといった課題を和らげられる点にある。一般に新薬は研究開始から上市までに10年前後を要し、開発費も10億ドル(約1563億円)を超えることが多いとされる。AI創薬企業の中には、標的の発見から臨床段階までを従来より大幅に短い期間で進め、費用も抑えられたとする例が出てきている。

取引面でも変化が見られる。医薬データ企業「医薬魔方(Pharmcube)」の創業者である周立運(Zhou Liyun)氏は、AI創薬が試行段階を超え、量を伴う成果の段階に入ったと指摘する。国内外でAI創薬関連の提携が相次ぎ、従来型の製薬企業でもAIを軸にした取引が増えている。

政策支援、技術進展、資本流入が重なる中、新薬開発に10年、10億ドル以上かかるとされる「ダブル10の壁」に風穴を開けつつある。中国の医薬産業は、AIを軸に新たな発展段階へと向かい始めた。(c)東方新報/AFPBB News