【2月10日 CNS】2025年、中国の縦型ショートドラマ(スマホ向けの短編ドラマ)産業は大きく伸びた。年間の市場規模は約900億元(約1兆9880億円)に迫る見通しで、2024年からほぼ倍増したという。視聴者も約7億人に達し、完成度の高い作品が増えたことで、短編ドラマへの関心が一段と広がっている。

縦型ショートドラマの制作は、いまや特定の都市に集まる傾向が強い。中国最大級の映画・ドラマ撮影基地として知られる浙江省(Zhejiang)の横店(横店影視城)が「撮影の街」として有名なのに対し、河南省(Henan)の鄭州市(Zhengzhou)は縦型ショートドラマの制作能力が高いことから、「縦型ドラマ版の横店」という意味を込めて「縦店」と呼ばれるようになった。データ分析会社DataEyeが公表したランキングでは、鄭州は評価88.5で「2025年中国・縦型ショートドラマ制作力都市ランキング」の首位に立った。2025年1~8月の鄭州の市場規模は38.5億元(約850億4419万円)に達した。

統計によると、2025年1~9月に鄭州で審査を経て配信開始となった縦型ショートドラマは3860本に上る。制作現場では、1日に多数の作品が撮影に入る「量産体制」が整っているという。2025年9月時点で、鄭州には専門の撮影拠点が15か所あり、ロケに使える総面積は16万平方メートルを超える。

撮影拠点の一つ「聚美空港縦型映像撮影基地」では、ロケ可能な面積が約2万平方メートルあり、撮影用のセットは約30種類そろう。現代の都市生活を描くジャンルであれば、必要な場面をほぼカバーできるという。基地には平均して1日10組ほどの撮影隊が入り、基本レンタル料は1日5000元(約11万447円)から。利用が14時間を超えると、1時間当たり300元(約6626円)の追加料金がかかる。レンタル料を支払えば基地内のセットをまとめて使えるため、同じ場所で一気に撮影を進められるのが特徴だ。使用頻度が高いセットは「自宅」「会社」「病院」で、自宅セットも内装の違いで「女性社長の家」「男性社長の家」といった設定に合わせて使い分けられているという。

鄭州が縦型ショートドラマの制作拠点として存在感を強めた背景には、制作を支えるサービスが一通りそろっていることと、コストの安さがある。2025年の最初の8カ月だけで、鄭州の関連企業は800社を超え、従事者は約4万人にのぼる。撮影隊の受け入れは1日平均80組以上とされる。業界関係者によると、鄭州での撮影コストは北京市や上海市などの大都市より30~40%低く、全100話規模の縦型ショートドラマでも制作費を30万~80万元(約662万6820〜1767万1520円)程度に抑えられるという。制作経験のある人材が多く、短期間で制作チームを組める点も強みとされる。

縦型ショートドラマが伸びる以前、鄭州のある河南省は農業が盛んな地域で、映像産業は必ずしも中心的な産業ではなかった。それでも鄭州は、縦型ショートドラマの急拡大という新しい波を捉えた。理由の一つは交通の利便性だ。鄭州は中国の主要な交通結節点で、高速鉄道なら6時間圏内で全国120以上の都市にアクセスでき、人や機材の移動がしやすい。常住人口が1300万人を超え、労働力が豊富で人件費を抑えやすい点も大きい。現地では、エキストラの出演料は8時間で1日110元(約2429円)だという。さらに、歴史文化資源や観光地が多く、撮影場所の選択肢が豊富なことも後押しになっている。

鄭州は今後、質の高い作品づくりに取り組むとともに、産業規模の拡大や海外展開にも力を入れる方針だ。統計では、2025年以降、鄭州で制作された縦型ショートドラマは100本以上が海外で配信され、累計ダウンロード数は約5500万回に達したという。複数の撮影拠点では、欧米や東南アジア、日本・韓国など海外市場を想定した撮影エリアの整備も進められており、鄭州を「縦型ショートドラマの制作拠点」として世界に売り込む動きが強まっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News