【三里河中国経済観察】世界の自動車産業の勢力図が変化しつつある
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【12月17日 CNS】日本経済新聞(Nikkei)が報じたところによれば、中国はすでに世界最大の純電気自動車(BEV)輸出国となっており、2025年にはガソリン車の輸出量でも日本を上回る可能性が指摘されている。同紙は、日本の自動車産業が大きな転換点を迎えつつあるとの見方を示している。
日本では長年、自動車産業が経済を支える主要産業として発展し、トヨタ自動車(Toyota Motar)、日産自動車(Nissan Motor)、マツダ(Mazda)などは世界のサプライチェーンにおける重要な構成要素となってきた。しかし近年、日本車メーカーの輸出は伸び悩んでいる。
2023年には中国の自動車輸出台数が日本を上回り、2024年には中国のガソリン車輸出が前年比26%増の440万台に達した。一方、日本のガソリン車輸出の伸びは限定的となっている。
将来予測でも、中国の存在感の高まりが示されている。みずほ銀行(Mizuho Bank)ビジネスソリューション部の湯進(Tang Jin)上席主任は、15年後には中国ブランド車の総出荷量が4000万台に達し、日本車は約2200万台程度で推移すると見込んでいる。また、コンサルティング会社アーサー・ディ・リトル(Arthur D. Little)は、2030年までに中国メーカーの海外販売が年間400万台増加し、南米、中東、アフリカ、東南アジアで高いシェアを獲得すると予測する。
こうした背景には、中国メーカーが電動化とガソリン車の両市場で事業を拡大する一方、日本メーカーは電動化移行や海外生産体制で慎重な姿勢が目立つという構造がある。新興国市場ではこの傾向が特に顕著だ。
調査会社JATOダイナミクス(JATO Dynamics)によると、2024年、トヨタの南アフリカでの販売は約15%減少する一方、中国メーカーのガソリン車販売は約3万台に達し、シェアは前年の10%から16%近くまで上昇した。チリでは中国メーカーの市場シェアが約3割となり、従来の大手ブランドのシェアは縮小している。
中国企業との技術面での競争も進んでいる。復旦大学(Fudan Univerity)の姜茗予(Jiang Mingyu)氏は、電子電気アーキテクチャやスマートコクピットなどの分野で、中国メーカーとの差が広がり、日本メーカーは電動化の初期優位を十分に活かせなかったと分析する。
近年では協業の形も変化している。かつては日本企業が技術を提供し、中国側が生産を担う構図が一般的だったが、現在は日産やホンダが中国の電池メーカーとの協力を深めたり、広汽トヨタ自動車(GAC Toyota Motor)が華為技術(ファーウェイ、Huawei)のスマートコクピットを採用するなど、中国側の技術を取り入れる動きがみられる。今年のジャパンモビリティショーでは、中国メーカーが日本市場向けの軽自動車を披露し、鈴木自動車の鈴木俊宏社長は「新たな競争が始まる」と述べた。
自動車産業では現在、電動化、ソフトウェア化、サプライチェーン構築など、複数の領域で再編が進んでいる。日本が直面しているのは、個別企業との競争というよりも、中国の自動車産業全体が持つ規模と産業体系の変化であり、これが今後の競争環境に大きな影響を及ぼすとみられている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News