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【12月08日 KOREA WAVE】人工知能(AI)ブームで空前の好況を迎えている韓国の半導体産業「K-半導体」に、深刻な警告音が鳴っている。SKグループの総帥であり、世界最大の高帯域幅メモリ(HBM)メーカーSKハイニックスを率いるチェ・テウォン(崔泰源)会長が「成長できないのは“頭脳流出国”だからだ」と警鐘を鳴らすなど、産業の核心を支える「人材」と「資金」の欠如が業界の構造的リスクとして浮上している。

韓国は経済協力開発機構(OECD)38カ国のうち、「頭脳流出国」ランキングで35位と最下位圏に沈む。米スタンフォード大学の「AIインデックス報告書2025」によると、韓国のAI人材は1万人あたり36人が海外に流出する計算だ。さらに、韓国産業技術振興協会によれば、国内のAI専攻学部卒業生のうち約4割が海外の大学院に進学しており、国内企業への就職より国外へのキャリア選択が目立つ。

こうした中、サムスン電子やSKハイニックスなど大手半導体企業は、米国や台湾などから人材を積極的にスカウトしている。サムスンはノーベル賞候補とされるハーバード大のパク・ホングン教授を未来研究機関SAITの院長に任命。SKハイニックスも現地でグローバルフォーラムを開催し、幹部を総動員して海外人材獲得に取り組んでいる。

半導体業界の人材不足は数字にも現れている。韓国半導体産業協会によると、必要人材は2021年時点で17万7000人だったが、2031年には30万4000人に増加する見込み。しかし年5000人程度しか新規人材が供給されておらず、2031年には5万4000人が不足するという。5人に1人が「空席」となる深刻な見通しだ。

さらに、国家の「投資体力」にも限界が見える。米国は半導体法を通じて390億ドルの補助金や110億ドルの研究資金、25%の税額控除を用意し、インテルの株式9.9%を取得して最大株主となった。日本も経済産業省が約2兆9000億円を半導体メーカーのラピダス(東京)に投入し、現物出資によって持分も取得する。台湾のTSMCも国家発展委員会(NDC)が最大株主だ。

一方、韓国の支援策は主に税制優遇にとどまり、現金支給のような直接支援は遅れている。チェ会長は「過去に例を見ない資金投資が必要」と主張し、国主導の財政支援を求めている。

現実には、民間主導での投資規模は限界に達しつつある。SKハイニックスは京畿道・龍仁に半導体生産施設(ファブ)4棟を建設予定で、最大600兆ウォンを投じる。サムスン電子も平沢や龍仁に巨大な国家規模の半導体団地を建設中で、既に総額420兆ウォンの投資が予定されている。

さらに、GoogleのTPU(テンソル処理装置)の台頭によりHBM需要が爆発的に増加するとの見通しもあり、韓国にとってはチャンスであると同時に、迅速な対応が求められる課題でもある。

民間だけでは支えきれない半導体産業の未来に向けて、韓国国会では年内に「半導体特別法」の処理が予定されており、ようやく財政支援の土台が作られる見込みだ。ただし、法案は支援の「根拠」を盛り込むにとどまり、具体的な補助金額などは明示されていない。間接支援が中心となることが予想されており、実効性に疑問の声もある。

業界関係者は「大企業への特恵批判が先行することで、積極的な支援が政治的に難しい。グローバル競争のゴールデンタイムを逃しかねない」と懸念を表明している。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News