森の中で隔離生活送る家族を引き離す判決、イタリアで物議
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【11月25日 AFP】イタリア東部アブルッツォ州キエーティ近郊の森の中で2021年から社会から隔絶した生活を送る外国人家族から子ども3人を引き離すという裁判所の判決が、司法の行き過ぎをめぐる議論が広がる中で、政治的な争点となっている。
伝統的な家族観を重視する極右政権を率いるジョルジャ・メローニ首相も本件を懸念していると報じられている。
この家族は、オーストラリア人のキャサリン・バーミンガムさんと英国人のネイサン・トレバリオンさんの夫婦と8歳の娘、6歳の双子の息子の5人構成。
近隣のラクイラの少年裁判所は20日、家の劣悪な衛生状態と、無許可で子どもたちに学校に通わずに家で勉強をする「ホームスクーリング」をさせていたことを理由に挙げ、この夫婦の親権を停止し、子どもたちと母親を保護施設に移送するよう命じた。
この判決を受け、インターネット上では裁判官に対する暴言や脅迫が相次ぎ、「森に住む家族を救え」という嘆願書には13万5000筆以上の署名が集まった。
極右政党「同盟」を率いるマッテオ・サルビーニ副首相は、裁判官の行動を「不道徳で、憂慮すべき、危険で、恥ずべき行為」と呼び、未成年者の「拉致」に等しいと批判。
「アブルッツォ州の裁判官とソーシャルワーカーの皆さん、迷惑をかけないでほしい」と述べ、司法改革の必要性を指摘した。
■「ストレスフリー」
夫婦は今月、国営イタリア放送協会(RAI)に対し、自分たちのライフスタイルは「ストレスフリー」で自然と調和していると主張し、森の中の家で子どもたちが「より健全に育っている」と語った。
RAIの家族の家の取材では、キッチンのまきストーブや、ぬいぐるみで埋め尽くされたカラフルな子ども用ベッド、そして家中に飾られたクリスマスの電飾が確認できた。
電気は太陽光パネルで賄い、トイレは微生物の働きを利用して排せつ物を分解し、肥料として再利用する「コンポストトイレ」で、屋外の小屋に設置されている。庭では、ロバ、馬、犬、猫、鶏、アヒルが自由に歩き回っていた。
バーミンガムさんはたどたどしいイタリア語でRAIに対し、「子どもたちは幸せで健康だ。私たちは自然に戻りたいだけで、何も悪いことをしていない」と語った。
だが、地元メディアによると、子どもたちは予防接種を受けておらず、学校にも通っていない。両親は地方自治体にホームスクーリングの申請もしていない。
教育省は24日午後、州の教育当局が「ホームスクーリングを通じて義務教育を修了する」ことがイタリアでは合法であることを確認したと発表した。
報道によると、昨年、子どの一人が毒キノコを食べて病院に搬送され、ソーシャルワーカーが呼び出されたことで問題が発覚したという。
裁判官の権力はイタリアで国民的議論となっている。メローニ首相の目玉となる司法改革案(裁判官と検察官のキャリア分離を含む)は来年、国民投票にかけられる予定だ。(c)AFP