【三里河中国経済観察】上海のバイオ医薬産業規模が1兆元超えへ
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【11月22日 CNS】中国経済を牽引する第一の都市・上海市で、新たな成長エンジンが静かに育ちつつある。
上海市科学技術委員会がこのほど明らかにしたところによると、上海のバイオ医薬産業は着実に規模を拡大しており、2021年の7617.14億元(約16兆6349億円)から2024年には9847.02億元(約21兆5047億円)へと成長し、年平均成長率は8.94%に達した。2025年上半期の産業規模はすでに5005.66億元(約10兆9317億円)に達しており、今年中に1兆元(約21兆8388億円)の大台を突破する見通しだ。
これは、電子情報、自動車、高端装備、ソフトウェア・情報サービスの4つの「1兆元産業クラスター」に続き、上海が正式に「第五の1兆元級産業」を迎えたことを意味している。
注目すべきは、バイオ医薬が1兆元産業の仲間入りを果たしたことで、上海が重点的に育成してきた人工知能(AI)、集積回路(IC)、バイオ医薬の3大先導産業が、そろって新たな経済の柱として立ち上がりつつある点だ。
この数字の背後には、産業エコシステムの加速的な進化がある。
例えば、バイオ医薬の総規模が1兆元に迫るだけでなく、製造分野も力強い成長を見せている。2021年から2024年にかけて、バイオ医薬の製造業産出額は1712億元(約3兆7388億円)から2011.67億元(約4兆3932億円)へと増加し、年平均成長率は6.9%となった。
国内でいち早くバイオ医薬産業を育成してきた都市として、上海の産業基盤はもともと強固だ。上海市の「生物医薬産業『第14次五か年計画(十四五)』発展計画」では2025年までに世界レベルのバイオ医薬産業クラスターの中核拠点を構築する目標を掲げており、100億元規模の産業園区を6か所整備し、産業規模は1兆元を超える見込みだ。
さらに、革新的な医薬品・医療機器の突破は、その地域の研究開発力を象徴する指標でもある。
2021年から2025年8月までの間に、上海で承認された国産I類新薬は30種類で全国の17%を占めた。次世代の製薬革命とされる細胞・遺伝子治療の分野では、上海発の承認品が4種類に達し、全国シェアの57%を占める規模となっている。
イノベーティブ医療機器でも高い実績を示しており、同期間に承認された第3類の革新的医療機器は45件で全国の20%を占めた。これらは、産学研の協働による成果でもある。
公開データによれば、上海のCNS(Cell、Nature、Science)など生命科学・医学のトップジャーナルでの論文数は増加を続け、昨年は93本、国際的な4大医学誌への掲載も52本に達した。また、PCT国際特許出願は2021年の1176件から2023年には1457件へと増えている。
上海バイオ医薬産業の台頭は、決して偶然ではない。
上海には、世界の大手製薬企業が集積する最も充実した産業エコシステムがある。2024年末時点で、上海のバイオ医薬関連企業は2183社に達し、製造、サービス、卸売まで産業チェーン全体を網羅している。浦西地区の繁華街から浦東地区のハイテクパークまで、世界の医薬大手が次々と拠点を構えてきた。世界上位20社の製薬企業・医療機器メーカーのうち、それぞれ19社が上海に本社または研究開発拠点を設置している。
また、上海には最も活発な産業資本が流れ込んでいる。2024年、上海は総額225億元(約4913億7300万円)のバイオ医薬母基金を設立し、すでに13の子基金が選定され、資金規模は5.59倍に拡大した。さらに100億元(約2183億8800万円)規模の買収基金も設立され、中国医薬やワクチンなどの重要分野で投資を進めている。2021~2024年の累計資金調達額は2383.72億元(約5兆2057億円)で、全国トップクラスに位置している。
上海はまた、政策改革にも先駆的に取り組んできた。『上海市薬品・医療機器管理条例』をはじめ、生物医薬全産業チェーンのイノベーションを支援する政策、合成生物学やAI×医療の融合など、制度改革でも全国をリードしている。
上海のバイオ医薬産業が1兆元規模へ成長しようとしているのは、単なる数字の拡大ではなく、都市の産業アップグレードの象徴でもある。張江薬谷から浦江ラボラトリー、科学装置から臨床研究センターまで、上海が構築したイノベーションの全チェーンが大きな力を発揮し始めている。
1兆元規模の産業が本当に立ち上がった時、上海が手にするのは単なる新たな成長極ではなく、未来に向けた産業の主導権である。
経済転換の岐路に立つ今、都市はどう競争力を築き直すのか。上海バイオ医薬産業の進化は、その問いに対する鮮やかな答えになりつつある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News