【11月15日 CNS】中国の李強(Li Qiang)首相が主宰した「経済情勢専門家・企業家座談会」に、8名の代表が出席した。その中で最年少だったのが、上海黒湖科技(Black Lake Technologies)創業者でCEOの周宇翔(Zhou Yuxiang)氏だ。周宇翔氏は「三里河中国経済観察」のインタビューに対し、「最先端技術を中国で実際に使える形にし、より多くの企業が低コストで利用できるようにしてきた」と語った。黒湖科技は、中国の多くの工場を「安価な標準品の大量生産・低利益」という従来のモデルから、「柔軟性のある現代的で効率の高い生産体制」へ転換させることを目指している。

「新しい需要を既存の産業能力とどう結びつけ、柔軟な生産を実現するか。これこそ新質生産力の核心だ」と周宇翔氏は言う。周氏は長年、過剰生産の課題を追ってきたが、市場には満たされていない新しい需要が数多く存在すると気づいた。近年人気の茶飲料、フィギュア、電子機器などの新興業態は、新しい消費を支えると同時に新経済の成長を生んでいる。米ダートマス大学(Dartmouth College)を最優秀で卒業した周氏は、2016年に帰国して黒湖科技を立ち上げた。動機は「西側の技術独占を破りたい」というものだったと言う。「中国には完備された産業基盤がある。中小企業が手頃な価格で先端技術を使えるようにしたい。それが企業の収益向上につながり、産業全体の高度化にも結びつく」と話す。黒湖科技は工場のデジタル化を支える「パートナー」として、データとAIが製造を動かす世界を目指している。

しかし中小企業は、生産現場の低効率、納期の不透明さ、工場間連携のアナログ運用、管理職への過重負担など、共通の課題を抱えている。これは従来型の製造モデルの限界を示すものだ。黒湖科技は、大企業向けの「黒湖智造」に加え、中小製造業向けに「黒湖小工单」を開発し、「小ロット・短納期」の現場を支援する。すでに4000社以上の大中規模企業、さらに2万8000社の中小零細工場がデジタル化の第一歩を踏み出した。

創業初期、周宇翔氏とチームは昼は工場現場に入り、夜はコードを書く生活を続けたという。工場の動きをデータに落とし込み、システムに反映させる作業の繰り返しだった。「中国の工場は転換点にある。SNSとECによって消費者と生産の距離が縮まり、個別需要が急増した。浙江省(Zhejiang)義烏市(Yiwu)や温州市(Wenzhou)の工場を歩き回り、柔軟な生産こそ突破口だと確信した」と語る。中小企業の柔性生産ニーズは大手ソフト企業に軽視されがちだが、新興ブランドの成功例こそ、中国の産業チェーンが柔軟性へ向かっている証拠だと彼はみる。欧州の機械時代がスイスのABBやシーメンス(Siemens)を生み、米国の自動化時代がハネウェル・インターナショナル(Honeywell International)やロックウェル・オートメーション(Rockwell Automation)を生んだように、中国製造の強みは「柔軟性」にある。需要の変化がすぐ生産に反映される構造は他国にはない。

「柔軟性は『人が無理をして』作るものではない。データが滑らかに流れ、正確に配分されて初めて実現する。ソフトウェア、データ、AI、エージェントが連動してこそ本当の柔性化が生まれる。大規模言語モデルの登場で、AIが工業を変える可能性はさらに広がった」と周氏は語る。黒湖科技は大規模言語モデルが話題になる以前からAI研究を始めており、CAD図面をAIエージェントが自動解析して工法を作り、工程表を生成し、従来の手作業を置き換える仕組みを開発した。これにより準備時間は60%短縮された。

2025年は黒湖科技にとって転機の年だ。黒湖科技は黒字化を達成し、売上成長率は75%に達した。周氏は「今年はAIネイティブへの全面転換元年だ。想定していなかった業種から新しいニーズが次々と寄せられ、SaaS(Software as a Service)企業という枠にとどまらない方向へ広がっている」と話す。黒湖科技の成長には、上海のイノベーション環境と政策支援が大きく寄与した。「黒湖小工单」は上海市経信委の取り組みから生まれ、現在は会社の売上の半分を占めている。周氏は「上海のイノベーション環境、行政の効率、中小企業への公平な支援が黒湖科技の成長を後押しした」と振り返る。

今後、黒湖科技は中国企業の海外進出に伴走し、ソフトウェアとAIによる「中国のソリューション」を届けていく。また、AIと大規模言語モデルを工業現場にさらに深く実装し、生産・管理の効率を高める取り組みを進める。「ソフトウェアとAIが掛け算されることで質的変化が生まれる。工業データで訓練した「現場特化型のAIエージェント」を作り、AIネイティブ化を一層進めたい」と周氏は語る。「ソフトウェア時代に蓄積した膨大なデータを、どうAIネイティブ時代へ引き継ぎ、乗り越えていくか。これこそ今の最大の課題であり、最大のチャンスだ」。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News