京畿道楊平郡にあるハイファミリー・アンデルセン公園墓地に設けられたジョンインちゃんの墓(c)news1
京畿道楊平郡にあるハイファミリー・アンデルセン公園墓地に設けられたジョンインちゃんの墓(c)news1

【11月06日 KOREA WAVE】「正直に言えば、児童虐待を100%防ぐことはできません。どれほど重い刑を科しても、必ず誰かがどこかの子どもを虐待するでしょう」

韓国で2020年、養父母の虐待によって命を落とした女児ジョンインちゃんの5周忌を前に、彼女を記憶する関係者への取材を通じて、当時の状況や制度改編について話を聞く中で、もっとも胸を締めつけられたのがこの言葉だった。

「なぜジョンインちゃん事件の後も児童虐待が続いているのか」。この質問に対し、ある専門家は「事件をきっかけに制度は改善され、市民の意識も高まった。だが、どんなに対策が整っても、子どもを傷つける大人は必ず存在する」と語った。

記者自身も、事件が二度と繰り返されないことを願って取材を進めていたが、その言葉にはやりきれない思いを抱かずにはいられなかった。

もちろん、ジョンインちゃん事件後に制度が大きく変化したのも事実だ。国会では児童福祉法および児童虐待処罰法が改正され、虐待対応体制に根本的な変革があった。

中でも、専門家が一致して「最大の変化」と語るのが「初動対応」の部分だ。

以前は、虐待通報を受けた警察が民間の児童保護機関とともに現場に赴いていたが、現在では地方自治体の専任児童虐待担当者が警察と共に出動し、現場での保護措置などを即時に取るようになった。

また、警察は通報を受けたすべての児童虐待案件に即座に出動する体制を整備。さらに、児童虐待の有無を専門的に判断する「児童虐待判断会議」の設置、専門医療機関の指定など、後続措置も進められてきた。

だが、実際に虐待で命を落とす子どもの数は、大きく減少していない。韓国の児童権利保障院が発表した「2024年 児童虐待主要統計」によれば、過去5年間に虐待により死亡した子どもの数は▽2020年:43人▽2021年:40人▽2022年:50人▽2023年:44人▽2024年:30人――になっている。

いまだに毎年30〜50人の子どもが虐待によって命を落としているのが現実だ。

「虐待をすべて防ぐことはできない」と語った専門家の言葉は、あまりにも残酷な現実を突きつけている。しかし同時に、事件が起こる前にそれを発見し、未然に防ごうとする社会の関心と努力が不可欠であることも忘れてはならない。

「子ども一人を育てるには、村全体が必要だ」というアフリカのことわざがあるが、これは児童虐待の防止にも当てはまる。地域社会の目と関心、制度に関わるすべての人々の協力があってこそ、制度は機能する。【news1 ハン・スヒョン記者】

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