【11月5日 AFP】スイス・バーゼルで今週展示が始まった、オレンジ色の囚人服姿で十字架にかけられたドナルド・トランプ米大統領を模した彫刻が、人々の笑みを誘い、議論を呼んでいる。

この作品は、英国の美術作家メイソン・ストーム氏によるもので、「聖人か罪人か(Saint or Sinner)」と題されている。白いクッションが敷かれたわずかに傾いた十字架に、囚人服を着て目を閉じたトランプ氏が横たわる姿を表現しており、磔刑や薬物注射による処刑を連想させる。

作品を展示しているギャラリー「Gleis 4」のオーナー、コンラッド・ブレズニック氏はAFPに対し「間近で見ると、本当に怖いほどリアルだ。しわの一つ一つまで再現されている」と語った。

当初はバーゼル中央駅構内で9月に展示を行う予定だったが、最終的に人通りの少ない市中心部の歩行者専用通路のショーウィンドウで先週末から公開を始めた。

4日、AFPが現地を訪れた際には、多くの通行人が足を止めて笑みを浮かべていたが、怒りを示す人は見られなかった。

バーゼル在住のノルウェー人女性マリットさんは「こうした作品を展示できるのは、民主主義の証し」と語り、「米国ではたぶん無理でしょう」と付け加えた。

ギャラリーオーナーのブレズニック氏は「トランプ氏自身は、この作品に共感するかもしれない」と述べ、「おそらく自分を『現代のイエス』と見ているのではないか。自分の行動は正しいと確信しているはず」と話した。

作者のストーム氏は、ストリートアートに着想を得た超写実的で型破りな作風で知られ、顔を常に覆面や自作のマスクで隠しているため、素顔は明かされていない。

現代社会の偽善を風刺する作風が特徴で、しばしば英国のアーティスト、バンクシーの作品と比較されている。(c)AFP