【10月28日 CNS】9月23日未明、浙江省(Zhejiang)の寧波市(Ningbo)舟山港に灯る光が夜を切り裂いた。汽笛が鳴り響くなか、「イスタンブール・ブリッジ号」が約4000個のコンテナと2億ドル(約305億5000万円)相当の貨物を積み込み、ゆっくりと港を離れた。

今後18日間、この中国の貨物船はベーリング海峡を経由して北極圏を横断し、中国とヨーロッパを結ぶ「氷上の航路」を開く旅に出る。

船がイギリスのフェリックスストウ港に到着すれば、世界の海運史に新たな記録が刻まれる。北極を越えて中欧を直結する世界初の定期コンテナ航路――「中欧北極高速航路」が正式に開通するのだ。

かつて北極を横断し、氷海の航路を切り開くことは、無数の探検家たちにとって夢のまた夢だった。

2017年、中国は初めて「氷上シルクロード」構想を提唱し、北極航路の国際協力を積極的に推進してきた。そしていま、中国とヨーロッパ間の貿易拡大、海運技術の進歩、地球温暖化による季節的な通航機会の拡大を背景に、その構想がついに現実のものとなった。
こうして中欧間の貨物輸送は、新たな時間の基準を手に入れることになる。

従来の中欧班列(鉄道)は「25日以上」、スエズ運河経由の海上航路は「40日以上」、さらに紅海危機の影響で喜望峰を迂回する場合は「50日以上」を要していた。それに対し、北極航路では航程が大幅に短縮され、輸送時間はおよそ18日にまで圧縮される。これは、輸送効率の質的な飛躍を意味する。

しかし、「中欧北極高速航路」の意義は、単なる時間短縮にとどまらない。

世界的に貿易の不確実性が高まるなか、この航路は中国が国際物流ルートを多様化し、自主的で安定した輸送能力を確立するための戦略的支えとなる。

わずか2週間前、ポーランドは「安全上の懸念」を理由に、ベラルーシとの国境全てを閉鎖した。その結果、数百本の中欧班列がベラルーシ側のブレスト駅で立ち往生する事態となった。

焦る中国の貿易業者と、ポーランドの対応を批判するドイツ政府関係者――膨大な中欧貿易の需要に対し、より迅速で安全な新しい供給網の確立が急務となっていた。

国家発展改革委員会(発改委)対外経済研究所の金瑞庭(Jin Ruiting)主任研究員は、「北極航路は北冰洋を直線的に通るため航程が約50%短縮され、二酸化炭素排出も50%削減できる。また、地政学的な紛争地域を避けられるため、中国製品輸送の『避難ルート』としても機能する。中国がグローバルな価値連鎖を再構築するうえで、戦略的な支点となる」と語る。

金氏によると、北極航路のもう一つの強みは「天然の冷蔵航路」とも言える特性にある。低温環境を生かし、精密機器や新エネルギー電池など温度管理が必要な製品の輸送コストを大幅に削減できるのだ。さらに、18日間という高速輸送は、クリスマス商戦向け工芸品など季節性商品のタイムリーな供給を可能にし、中国の外貿企業が大量生産型から柔軟なカスタム生産型へと移行する後押しになる。
「北極航路は地政学的リスクが相対的に低く、重要な代替貿易ルートになり得る」と、ワシントンのシンクタンク「The Arctic Institute」の創設者で上級研究員のマルテ・ヘンペルト(Malte Humpert)氏は指摘する。

「イスタンブール・ブリッジ号」が出港した翌日、ポーランドはベラルーシとの国境を再び開放すると発表したが、ドナルド・トゥスク(Donald Tusk)首相は「再び脅威が生じれば、再閉鎖もあり得る」と述べている。

金瑞庭氏は、世界の物流環境が変化するなかで「北極航路の価値は『距離を縮める』だけでなく、『安全を確保し、供給網を強靭化する』点にもある」と強調する。スエズ運河の混雑や紅海危機などのリスク、また中欧班列が直面する地政学的な制約を回避し、中国が国際物流の「受け身」から「主導的立場」へと転じることを可能にするという。

中国外交部も最近、「中国はロシアを含む北極圏沿岸諸国、また関心を持つ他国と共に、北極航路のインフラ整備や運営、環境保護などで協力を深めていく用意がある」と表明している。

将来、北極圏を行き交う中国の貨物船が増えれば、この「氷海を貫く新たな航路」は国際貿易の重要なルートとなり、世界の物流地図を塗り替えることになるだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News