登らない登山、飛ばないバンジー 中国で「ゆる旅」人気
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【10月13日 CNS】エレベーターで登る「無痛登山」、ゆっくり地上に降りる「スローバンジー」、水面に身を任せる「ゆる漂流」
いま中国では、体力をほとんど使わずに最大限の心理的満足を得る「窝囊游(ゆる旅)」が静かにブームを巻き起こしている。刺激を求めつつも、安全で癒されたい人のための新しい旅のスタイルだ。
北京市の黄花城水長城、湖北省(Hubei)黄石市(Huangshi)の「天空の城」、湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)の石燕湖など、各地の観光地では相次いで「ゆるバンジー」体験を導入している。
高さは通常のバンジーの半分ほどで、参加者は専用の安全装備を着けて跳台から軽く飛び出すだけ。落下の瞬間にわずかに重力を感じるが、すぐに伸縮ロープに支えられてゆっくりと降下する。怖さよりも安心感が勝り、誰でも笑いながら空中散歩を楽しめる。
激しい急流や波を越える必要のない「ゆる漂流」も、近年人気が急上昇している。データによると、今年の夏は「ゆる漂流」の検索数が前年同期比で135%増加したという。
河南省(Henan)の重渡溝や山東省(Shangdong)の利山涧、浙江省(Zhejiang)安吉県の原野西渓、江蘇省(Jiangsu)常州市(Changzhou)の茅山森林世界、さらには北京市郊外でも、続々と新しいコースが登場している。救命胴衣を着けて小舟に寝そべるか、水面にそのまま浮かびながら、ただ空を眺め、川の流れに身を任せる。
北京市在住の林木さん(Lin Mu、仮名)さんは、8月に広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)で体験した「ゆる漂流」を忘れられないという。
「体を『大』の字に広げて力を抜くと、世界が一気に静かになって、心まで穏やかになる。流れに乗って回転しながら、自然が次々と景色を運んできてくれるんです。周りには同じように無言で漂う人たちがいて、まるで全員が自然と一体になって現実から逃れているようでした」と語る。
山登りにもこの「ゆるスタイル」が登場している。浙江省の千島湖畔にある天屿山では、徒歩で登れば1時間かかるところを、全長345メートルの屋外エスカレーターでわずか10分。しかも噴霧装置つきで、炎天下でもミストに包まれて涼しく、まるで雲の中を歩いているような気分になれる。
下山も遊び心たっぷりだ。天屿山ではゴムボートに乗って、ガラス製のウォータースライダーを滑り降りることができる。滝や竹林を抜けながら、10分ほどで山のふもとに到着する。
ほかにも各地の観光地では「自動登山」をさらに楽しくアレンジしている。杭州市(Hangzhou)のOMGハートビートパークでは、木馬型の乗り物に乗って6分で山頂へ向かう「天馬行空」体験が人気だ。山頂で再び乗り物に乗って下山もでき、何度でも楽しめる。
スリルを味わいたい人には、ジグザグコースを疾走する「スカイレール」が用意されており、スピードを自分で調整しながら山の景色を満喫できる。
こうした「ゆる旅」は、若者だけでなく高齢者や子ども連れの家族にも支持されている。安徽省(Anhui)の明堂山では、2020年に「怠け者登山」プランを導入。ロープウェーや動く歩道を使って、体力に自信のない人でも手軽に山を楽しめるようにした。湖北省から訪れた陶楽(Tao Le)さんは「高齢の両親も子どもも無理なく参加でき、まさに『登らずに山を遊ぶ』体験でした」と話す。
西北師範大学(Northwest Normal University)の李巍(Li Wei)教授は、「『ゆる旅』は『怠けること』ではなく、新しい体験の再構築だ」と指摘する。
「今の中国人旅行者は『頑張って遊ぶ』よりも、心身を整える持続的な旅を求めている。山や川は征服する対象ではなく、抱きしめる対象に変わりつつある。旅の価値は強さや量ではなく、どれだけ心地よく、どれだけ自分と向き合えたかにあるのです」と語った。(c)CNS/JCM/AFPBB News