なぜ中間層は「アイアンマン」に夢中なのか
このニュースをシェア
【10月11日 東方新報】「マラソンに飽きた友人の一部はトレイルランに、もう一部はトライアスロンに移りました」
ロード競技が好きなフランクさん(仮名)はそう語る。トライアスロンは、水泳・自転車・長距離走を連続して行う過酷な耐久レースだ。2025年10月に江蘇省(Jiangsu)啓東市(Qidong)で開催された大会では、1.5キロの水泳、40キロの自転車、10キロのランを組み合わせたコースで、参加費は550〜750元(約1万1769〜1万6048円)。一方、上海市で行われた「アイアンマン70.3」は2500元(約5万3496円)と高額ながら、受付開始から10時間で定員に達した。
北京市在住の外資系企業幹部エリックさん(仮名)は、これまでに9回トライアスロンを完走している。「マラソンは後半に体力が尽きるけれど、トライアスロンは異なる筋肉を使うのでバランスが良い」と話す。彼の次の目標は、3.8キロを泳ぎ、180キロを走り、さらに42.195キロを走破するフル・アイアンマンだ。「完走すれば『アイアンマン』と呼ばれる。それは勇気と忍耐の象徴です」と笑顔で語る。
会社員のフィオナさん(仮名)も2024年だけで8大会に出場し、週に約12時間トレーニングを続けている。「参加者は中間層が中心で、普段から運動習慣のある人が多い。特に30代から40代の競技レベルが高く、50代でも上位に入る人が少なくありません。ハマると『生涯スポーツ』になります」と言う。
競技には相応の出費も伴う。フィオナは6万元〜7万元(約128万3916〜149万7902円)のロードバイクとトライアスロン専用バイクを使い分け、水温が低い場合に着用が義務付けられるウェットスーツ(1000〜2000元<約2万1398〜4万2797円>)や専用ウェア(1着1000元以上)も揃えている。エリックも遠征費や装備を含め、これまでに10万元(約200万円)以上を投じた。「性能はもちろん、見た目も大事。格好が決まると気持ちが上がります」と話す。
一方で、倹約派の参加者もいる。北京大学(Peking University)の研究員・フランクさんは、普段使っているロードバイクで出場し、800元(約1万7118円)のスーツで完走する。「大会によっては自転車をレンタルできるので、誰でも気軽に挑戦できます」と語る。2017年には、共有自転車で完走した参加者もいたという。
中国で初めてトライアスロンが開催されたのは1987年の海南省(Hainan)。現在では年間60大会を超える規模に拡大し、世界的ブランド「アイアンマン」や「チャレンジ・ファミリー」が参入している。国内では、上海発の運営会社「STCトライアスロンスポーツ」が300以上の大会を手がけ、スポンサーにはスポーツ用品、金融、自動車、化粧品など多彩な企業が並ぶ。2025年に山東省(Shandong)威海市(Weihai)で行われた大会では、宿泊・飲食・観光などの関連消費が通常時より30%以上増加したという。
スポーツマーケティング専門家の李晨(Li Chen)氏は、「トライアスロン参加者は購買力が高く、ブランドへの忠誠心も強い。挑戦・継続・達成といった価値観が企業のマーケティング戦略と合致している」と分析する。
トライアスロンは今や単なるスポーツではなく、中間層の「自己投資」と「達成欲」を満たす新たなライフスタイルとなっている。高額な装備も、長時間の練習も、すべてはゴールの瞬間の達成感のため。
「アイアンマン」たちは今日も、自分の限界を超えるためにスタートラインに立つ。(c)東方新報/AFPBB News