【10月10日  People’s Daily】「かつて葡萄を植えるのは食料を得るためだった。今ワインを造るのは発展を図るためだ」、寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region%)呉忠市(Wuzhong)紅寺堡区の「匯達陽光生態ワイナリー」の展望台に立ち、遠くに広がる葡萄畑を眺めながら、李財(Li Cai)さんは湧き上がる感情を抑えきれない様子で、こう語った。

1999年、李財さんが紅寺堡区にやって来た当時、周囲は礫砂漠(れきさばく)ばかりだった。当時の賀蘭山(Helan Mountains)東麓のワイン産業はまだ萌芽期にあり、栽培基地は点在するのみで、農家は葡萄の生果実を売ることで生計を立てており、1ムー(約666.7平方メートル)当たりの収益は1000元(約2万740円)に満たなかった。

寧夏ワイン産業の急速な発展に伴い、何軒ものワイナリーが次々と建設され、かつての荒涼とした砂漠地帯は、今や一面の命の息吹に満ちている。李財さんも当時の「溝掘り作業員」から、ワイナリーのチーフワインメーカーにまで上りつめた。

李財さんの人生の変貌は、寧夏ワイン産業の飛躍的発展を如実に物語っている。礫砂漠の開拓から、海外での名声獲得まで、寧夏ワイン産業はゼロから始まり、弱小から強大へと成長した。
昨年の醸造用ブドウ栽培面積酿は60.6万ムー(約4万400ヘクタール)、年間ワイン生産量は1億4000万本、総合生産額は450億元(約9333億円)に達し、周辺の農家に約13万人の雇用機会を提供し、賃金収入12億2000万元(約253億280万円)を生み出した。

紅寺堡区から北へ90キロ、青銅峡市の鸽子山(Gezishan)産地にある西鴿ワイナリーに、先ごろ特別なゲストが訪れた。ワイナリーの新型ワインが、フランス・ボルドーから来たワイン商・デュラン(Durand)氏の購買リストに加えられた。「このワインはヨーロッパの高級市場で十分通用する実力を持っている」、デュランド氏を感動させたのは、ワインの品質だけでなく、「賀蘭山東麓ワイン」というブランドへの評価だった。

「寧夏賀蘭山東麓葡萄酒産業園区」管理委員会技術サービス処の穆海彬(Mu Haibin)処長は「土壌のpH値から葡萄収穫時の糖度、オーク樽熟成期間から瓶貯蔵期間まで、我々は100近い細分化された基準を制定した。産区内の多くのワイナリーがEU有機認証を取得し、国際市場への『足がかり』を手にした」と説明する。

近年、寧夏は「賀蘭山東麓ワイン」を総合ブランドとして掲げ、産地のワイナリーを国内外のワインコンテストや展示会に積極的に参加させ、ブランドの知名度向上と国際市場への参入を図っている。これまでに60以上のワイナリーが、ベルリン、ブリュッセルなどの国際大会で計1800以上の賞を受賞している。

「ワインを飲むのは単なる『ワイングラスを使う儀式』に留めてはならず、消費シーンをより多くの人びとの生活の中に組み込むべきだ。我々が開発したプルトップ缶入りのワイン『小酌(意味:軽く一杯)』シリーズは、ECチャネルで大ヒット商品となった。ドラマ鑑賞やキャンプ、バーベキューなどに非常に適している」、西鴿酒庄のチーフワインメーカー・廖祖宋(Liao Zusong)氏はECサイトの管理画面を開きながら、こう語った。

ここ数年、明代の長城(Great Wall of China)遺跡の麓にある西鴿酒庄は、人気ドラマのロケ地として一躍有名になった。

「この機会を捉え、没入型のワイン文化体験に力を入れる」、廖氏はこう考え、観光客を連れて20万個の石で築かれた賀蘭山の古風なワインシャトー(ワイン蔵)の中を案内している。西鴿酒庄では、葡萄畑のサイクリングからワイン醸造体験まで様々な体験ができ、観光客は自分専用のラベルのオーダーメイドや星空の下のテント宿泊、ワインメーカー厳選のワインと料理を味わうなど、ワイン文化の魅力を全面的に感じることができるプランが用意されている。

現在、寧夏には中国の観光地品質ランク2A以上のワイナリーが22あり、昨年は延べ300万人以上の観光客を受け入れた。「ワイナリー観光」がワインの販売促進効果はますます顕著になっている。

銀川市(Yinchuan)西夏区昊苑村の葡萄畑で、村民・張生傑(Zhang Shengjie)さんがスマホのアプリを開くと、画面には土壌の温度、湿度、日照強度などのデータがリアルタイム表示された。

張さんは「今はどれだけ水をやるか、どんな肥料をやるか、スマホでちょっと操作するだけで済む。スマート農業のおかげで葡萄の品質が向上し、昨年は1キロ当たり3毛(約6円22銭)高く売れた」と話す。

「汗水農業」から「スマート農業」へ。ここ数年、昊苑村は1万ムー(約667ヘクタール)のワイン用ブドウ畑を基盤に、19のワイナリーの誘致に成功した。昨年のワイン生産量は6000トン、生産額は約4億元(約82億9600万円)に達し、年末には「賀蘭山東麓葡萄酒産業デジタルサービスプラットフォーム」に接続される予定だ。

「寧夏葡萄酒与防沙治沙職業技術学院」の謝春梅(Xie Chunmei)副教授は「QRコードを読み取れば、1本のワインの『デジタルID』を見ることができる。どの葡萄園でどう栽培されたか、発酵温度は何度か、オーク樽でどれだけ熟成されたかなど、全てがわかる」と説明する。ワイン醸造のデジタル化転換は、初期実験段階では即座に効果を発揮した。葡萄の総糖度は25.7%まで上昇し、高品質ワイン用ブドウの基準に達した。1ムー(667平方メートル)当たりの収量は600キロから800キロに増加し、その一方で水使用量は30%減少した。

寧夏はまた、「ワイン+文化観光」の融合的発展を推進している。「ワイン+キャンプ」「ワイン+音楽祭」などの新業態が相次いで登場し、賀蘭山の麓の個性豊かなワイナリーや「緑の海」のような葡萄園は、周辺の県・市・区にとって、産業を興し地元の人びとを豊かにする独自の資源となっている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews