■「全体主義」

リネハン氏は、今回の逮捕はXに投稿した3件のメッセージに関連していると述べた。

その一つでリネハン氏は、「トランスジェンダーを自認する男が女性専用スペースにいる場合、彼は暴力的かつ虐待的な行為を犯している」「騒ぎ立て、警察を呼び、それでも駄目なら彼に金的を食らわせてやればいい」と述べた。

リネハン氏の逮捕は、英国の言論の自由に関する法律への注目を再び集めた。

ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者で、生物学的な性別は変えられず、本人の意思で性別は決まらないと考えるジェンダークリティカル派としても知られる英作家J・K・ローリング氏は、リネハン氏の逮捕を「全くもって嘆かわしい」ものであり「全体主義だ」と批判した。

億万長者でXの所有者である米実業家イーロン・マスク氏は、英国は「警察国家(警察が市民生活のすみずみにまで介入・干渉するような国家)」だと述べた。

一方、緑の党のザック・ポランスキー党首は、投稿内容を考慮すると「妥当な措置」だとして逮捕を擁護した。

英国では最近、親パレスチナ団体「パレスチナアクション」への支持を表明したために数百人が逮捕されたのを受け、言論の自由が注目を集めている。

パレスチナアクションは、所属する活動家がロンドン郊外の空軍基地に侵入し、軍用機2機に塗料を吹き付け、損傷させたのを受け、テロ組織に指定され活動を禁止された。

昨年には、Xに「(難民認定申請者を収容する)ホテルすべてに火を付けろ。私の知ったことではない」と投稿した女が禁錮2年7月の判決を受けた事件をめぐっても議論が巻き起こった。

米国のJ・D・バンス副大統領は言論の自由の問題について特に声高に訴えており、2月のホワイトハウスでの会談でスターマー氏にこの問題を提起した。

リネハン氏は人気シチュエーションコメディー「ブラックブックス」と「ハイっ、こちらIT課!」の共同制作者でもあり、後者はエミー賞や英国アカデミー賞を受賞した。

同氏は最近、自身が執筆したエピソードがトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)的だと批判されたことをきっかけに、ジェンダークリティカル的な見解で知られるようになった。

リネハン氏は別の事件で4日にロンドンの裁判所に出頭することになっている。こちらの事件ではトランスジェンダーの人に対する嫌がらせと器物損壊の罪に問われている。(c)AFP