惑星探査機「天問2号」、小惑星へ向け出発・中国
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【9月14日 People’s Daily】中国・四川省(Sichuan)の西昌衛星発射センターで5月29日未明、惑星探査プロジェクト「天問2号(Tianwen-2)」探査機の打ち上げに成功し、広大な宇宙空間へと飛び立ち、小惑星探査とサンプル回収への旅をスタートさせた。
関係者の話によると「天問2号」の主な任務は、小惑星「2016 HO3」の探査と採取したサンプルを地球への持ち帰ること、そしてその後に火星と木星の間にあるメインベルト彗星「311P」を科学的に探査することだ。
このミッションは全13段階で構成された、地球から約1億5000万~5億キロ離れた地点まで到達する計画だ。中国の深宇宙探査は新たな一歩を踏み出した。
■なぜ「2016 HO3」と「311P」を選んだのか?
小惑星「2016 HO3」は地球の「準衛星」と呼ばれ、地球軌道付近を安定して公転し、その周期は地球とほぼ同じだ。軌道が比較的安定しているため、事前の軌道設計で探査機が到達するのに必要なエネルギーが比較的少なくてすむ。続けてメインベルト彗星「311P」を探査するための実現可能なプランになっている。
また、初期研究によれば、「2016 HO3」には太陽系誕生時の原始的な情報が残されている可能性が高く、太陽系初期の物質組成や形成過程、進化の歴史を研究する上で極めて高い科学的価値を持っている。
一方、メインベルト彗星「311P」は火星と木星の間に存在する「小惑星帯」を公転する小天体で、伝統的な彗星の物質構成の特徴と小惑星の軌道的特徴を併せ持っている。この彗星を探査することで、小天体の物質組成や構造、進化のメカニズムの解明が進むと期待される。
■「天問1号」と比べ、「天問2号」の難しさは?
中国初の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」は、単一ミッションで火星の「周回・着陸・巡回」を達成した。一方、「天問2号」は探査目標が異なるため、技術的な難易度も異なる。
第一に、微弱重力下でのサンプル採取が必要なこと。
観測データによると「2016 HO3」の平均直径は約41メートルで、ほぼ無重力状態で、しかも高速自転している。探査機は限られた時間内に安定した接触とサンプル採取を完了しなければならず、任務の難度は極めて高い。
第二に、探査距離のスケールが大きいこと。
「2016 HO3」は地球から約1800万~4600万キロの距離で、「311P」は約1億5000万~5億キロ離れており、通信にも大きな遅延が生じる。地球からの距離が遠く、複数目標の探査、任務期間が長いことから、軌道設計、電力管理、自律制御、そして機器の長寿命・高信頼性などが強く求められる。
さらに、探査対象の特性に不確実性があること。
現時点の観測データでは「2016 HO3」の自転速度や表面状態などについて、まだ不確定な部分を残している。
「天問2号」には、中視野カラーカメラ、マルチスペクトルカメラ、可視近赤外線イメージング分光計、熱放射分光計、探査レーダーなど11種類の科学機器が搭載され、データ取得を支援する。
従来の地球周回軌道への打ち上げでは、ロケットの分離速度は第一宇宙速度(秒速7.9キロ)で十分だったが、今回は探査機が地球の重力圏を脱出するため第二宇宙速度(秒速11.2キロ)を超える必要があり、極めて高い速度とエネルギーが要求された。ロケットの打ち上げ能力、ミッション遂行能力、信頼性などを総合的に考慮し「長征3号乙(Long March 3B)ロケット」が選ばれた。
中国の高軌道打ち上げの主力ロケットである「長征3号乙」は、これまでに108回の打ち上げ実績があり、月探査機「嫦娥3号( Chang'e-3)」「嫦娥4号(Chang'e-4)」など月探査ミッションも遂行してきた。
専門家によると、小惑星は体積が小さく、質量が軽く、重力が弱いため、捕獲が困難であるため、軌道投入の精度が非常に重要だ。
今回のミッションでは、軌道投入速度を秒速11.2キロにする一方で、その誤差を秒速1メートル未満に抑える必要があり、もしこれを外すと百万キロ以上の誤差が生じる可能性があるという。
中国航天科技集団の専門家・魏遠明(Wei Yuanming)氏は「この精度は、北京からバスケットボールを投げて上海のゴールネットに入れ、さらにボールの進入角度と速度まで正確に制御するようなものだ」と説明する。そのため開発チームは「反復誘導技術」に加え、分離直前のロケットの速度と姿勢をリアルタイムで調整する「最終速度補正技術」を採用し、精度要件を満たした。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews