四川省彭州市:低空経済が「離陸」するまで・中国
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【9月8日 People’s Daily】四川省(Sichuan)彭州市(Pengzhou)桂花鎮では、さまざまなモデルやサイズの無人航空機(ドローン)が空中で旋回や平行移動やホバリング(空中停止)を行う一連の試験飛行テストの光景を頻繁に見ることが出来る。それはここに「国家級民間無人航空機試験基地『天空の眼』」があるからだ。
彭州市は成都平原の西北部に位置し、海拔489メートルの平野部から海拔4814メートルの山岳地帯まで広がり、この巨大な高低差が独特の地形を形成し、低空経済の発展に大きな試験空間を提供している。
現在、「天空の眼」基地には、試験・測定飛行、「防空対応」検証、情報通信など10の主要機能基地と19の大テストシーン(試験場所)が整備され、累計145社の企業や研究機関が拠点を置いている。施設数とテストシーン数は、全国20か所の国家級試験基地の中で首位を誇っている。
さらに、「天空の眼」基地は、全国に先駆けて、空域管理の「審査批准制」から「事前届出制」への改革を実現している。無人機の飛行承認に要する時間は、従来の7業務日前の申請から、飛行の30分前までの事前届出のみで試験飛行が可能となり、試験から実用化までのサイクルが大幅に短縮された。
データによれば「事前届出制」導入後は「天空の眼」基地の1日平均飛行回数は延べ200回を超え、空域利用効率は5倍以上向上した。
同時に、彭州市は基地に集積したドローン関連企業の資源を活用して、低空安全保障分野の能力構築を積極的に探求し、偵察、識別、防空対応を一体化した「低空空域管理プラットフォーム」の構築を進めている。
「天空の眼」基地には、光学システムの設計製造に携わる企業「深セン耐傑光電」が拠点を置いている。同社の責任者・陳偉(Chen Wei)氏が彭州市を視察に訪れた当時、「天空の眼」はまだ創設初期の段階にあった。しかし、陳氏はこの地の地形の多様性、空域使用の利便性、ドローンのテスト飛行回数の多さという利点を一目で気に入り、わずか1週間で、基地施設への入居手続きと試験条件の準備を完了した。
その後「耐傑光電」チームは、技術的な課題を克服し、継続的な革新を重ねた結果「マルチスペクトル光電トラッキング製品」を完成させた。この製品はマルチスペクトルイメージング技術と知能型識別(AI認識)技術を組み合わせ、半径3~5キロメートルの範囲で『低高度・低速・小型』の目標(ドローンなど)を全天候で24時間365日間監視することができ、都市の防犯や大規模イベントの警備などに活用できる。
「この谷間の地で、我々は製品だけでなく、夢も検証できた」と陳氏は語った。
近年、彭州市は「生産製造基地+研究開発・試験基地」を集積させ、試験・測定飛行サービスの提供から生産製造サプライチェーンへの拡大を実現した。
彭州市はまた、全国初となる「ドローン4S店」を設立し、ドローンの販売(Sales)、整備(Service)、部品供給(Spare parts)、情報提供(Survey)の4つのサービスモデルをカバーしている。
ここでは、ユーザーは全てのシリーズのドローンや偵察・防空対策製品を調達できるだけでなく、具体的なニーズに応じたカスタマイズソリューションを購入することもできる。さらに「購入後即試験飛行」のワンストップサービスも享受できる。
人材は産業発展の「かなめ」だ。彭州市は中国西南地区で初となる「無人機(ドローン)スクール」を設立し、専門訓練、技能研修、科学普及教育などの教習科目を開設した。また、電子科技大学(University of Electronic Science and Technology)や中国民航飛行学院と共に「実践訓練プラットフォーム」を構築して、全国で累計3000人余りの専門人材を育成してきた。
物流配送、緊急救援、設備点検、行政サービス、警察サービスなど、彭州市では、ドローンが多くの産業や分野で、場面に応じた応用シナリオを実現している。
昨年12月、彭州市の白鹿鎮・姚家村の村民たちは「空中宅配」を体験した。全自動のドローンが郵便物や荷物を搭載して、従来は40分かかっていた配達をわずか8分で完了させた。「空中宅配」の登場で、山間部の郵便物配達効率は80%以上向上した。
現在、彭州市は山間部に50か所の「低空物流拠点」を配置しており、昨年1月から現在までに、累計6000回以上の配送飛行を実施している。
緊急救援の場面では、ドローンはさらにその真価を発揮する。今年2月、桂花鎮鹿坪社区で山崩れが発生した際、事前設定されたルートで巡回監視中のドローンが最初に危険を察知した。搭載された熱画像センサーとガス探知センサーで、被災者の位置が正確に特定できた。
地質災害の早期警戒や森林火災の防火・消火などの分野において、この「空・天(宇宙)・地一体型」の防災システムは、潜在リスク発見の迅速性を80%向上させた。
「ドローンにできることはまだたくさんある。彭州市は常に『ドローン+』の深化に努め、応用シナリオを拡大し、低空経済を大いに発展させるつもりだ」、彭州市低空経済担当弁公室の責任者はこのように語っている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews