古代の文物が出土した空港の敷地に博物館を建設・中国
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【9月5日 People’s Daily】世界的に有名な中国の古都「西安(Xian)」は3100年以上の都市建設の歴史と、1100年以上の「国の都」としての歴史を持っている。星の数ほど多い歴史的な文物が市内の至る所に散らばり、地下に埋もれた文物の密度は全国でもトップクラスだ。
もしも都市の建設中に文物を掘り当てたらどうするのか?
記者はこの答えを探して、陝西省(Shaanxi)の「西安咸陽国際空港(Xi'an Xianyang International Airport)」を訪れ、「発掘と建設工事」の2つの課題をどうやって、つなぎ目無しでダイレクトに連携させることが出来たのか、どういう経緯で空港内に「博物館」が建てられたのかを取材した。
2020年、「西安咸陽国際空港・第3期拡張プロジェクト」が始動した。それと同時に、陝西省考古研究院は西部機場集団(China West Airport Group)と連携して大規模な考古学調査を実施し、合計6800余りの様々な遺跡を発掘した。その中には4000基余りの古代の墓もあり、2万2000点(組)以上の多様な文物が出土した。
「調査初日から北周時代の墓群が発見され、その後、戦国時代の秦代の墓や漢代の貴族の墓が次々と発見された。工事現場で調査隊の懐中電灯の光は一晩中消えることはなかった」、空港建設指揮部の職員・斎全海(Qi Quanhai)氏は当時の様子をこう語った。
ここでは、最も密集した場所には1平方キロ当たり300基を超える墓が分布していた。建設関係者は、今回の空港拡張工事が単なる民生事業ではなく、歴史との深い対話であることをしっかりと認識した。
数千基に及ぶ墓の緊急保護的な発掘に対して、空港建設指揮部と陝西省考古研究院は「エリア分け、優先順位分け」という画期的な協力モデルを採用した。工事が急がれる区域を優先的に集中発掘し、他の区画は工事を一時的に延期した。そして発掘が完了した区域から直ちに施工者側に引き渡した。
斎氏は「考古調査チームと施工者側は位置情報を共有し、発掘区域と工事の進捗がリアルタイムで確認できた。綿密な連携で、工事の進行と文物の緊急保護を同時並行的に進めることができた」と説明する。
このような「インフラ建設が歴史的文物の発掘に配慮し、発掘がインフラ建設に協力する」という方式は、第3期工事を予定通り進行させただけでなく、「荷物を載せたラクダの俑(よう)」などの貴重な文物を発掘することができた。
22年7月、空港建設に伴う考古発掘で、チームは北周の初代皇帝・宇文覚(Yu Wenjue)の墓を発見した。被葬者の身份が公表されると、社会から大きな関心が集まった。宇文覚の墓がある場所は、北側が空港西インターチェンジ、南側が建設中の空港ニュータウン計画道路、東側が空港第三期拡張区域となっていた。
片やビジネス、貿易、運輸物流、片や貴重な歴史的価値、これらのバランスをどう取ればよいのか?
多くの関係機関が、考古学、歴史、建築、文化財保護など幅広い分野で繰り返し議論と協議を重ね、最終的にはこの墓をそのまま現地で埋め戻して保護し、そこに遺跡公園を建設した上で、その歴史的、考古学的な情報を、LED大画面などを使って展示するということになった。
空港ニュータウン党政弁公室の幹部・馬志峰(Ma Zhifeng)氏は「この方法で、社会的な効果を最大限に発揮しつつ、現地の文化価値と経済発展の双方の利益が実現できる」と説明する。
実際には「考古学優先」の考え方が、工事全体を通じて貫かれている。空港と市街を結ぶ鉄道「西安机場城際線」の敷設ルートは、秦代の陶器制作工房跡と咸陽城遺跡を避けるために何度も「大きな迂回」をしている。文物保護のために工事が緊急停止されたことは100回近くにもなる。工事再開時には、古代遺跡に向かって自発的にお辞儀をする作業員もおり、現代の工事が歴史と文化に対して抱く最も素朴な敬意の表れが見られた。
空港工事現場が「一瞬で考古学現場に変わる」というニュースは社会で大きな話題となり、10万件を超えるネットユーザーが「現地に博物館を建てるべき」という声を上げた。
そしてこの声は最終的に採用され「西部機場博物館」が西安咸陽国際空港T5ターミナル内に完成し、世界初の空港内の「現地文化財展示博物館」となった。
この博物館は唐代の建築群を模してターミナルビルの中心部に建設され、その展示品は「在地性」(現地出土であること)が強調されている。多くの展示品は空港建設時に発掘された墓葬地から出土したものだ。これらの展示物は「現地の物語(土地に根ざした歴史的叙述)」で現地の歴史を再構成するものになっており、文物の一点一点がこの土地とかつてここに住んだ人たちとのつながりを物語るものになっている。
この博物館は2月26日の一般公開以来、延べ約10万人の来館者を迎え、ボランティアによる解説は1300回以上行われ、大学と連携しての留学生を対象とした「没入型」の見学会も実施された。
また、ライブ配信イベントを開催して、ネットユーザーとの「クラウド対話」も行われた。さらに、3Dデジタル実習生「裴芙舟」を作り出し、来館者との音声対話も実現させた。
世界各地の旅行客がこの静かな博物館に足を踏み入れ、文物との対話の中で歴史をたどり、時空を超えた体験を楽しんでいる。
西部機場集団の林賓(Lin Bin)副総經理は「現代の空港は、単に飛行機が離着陸するだけの場所ではなく、新しいタイプの文化空間なのだ」と話している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews