【8月31日 People’s Daily】裁断員が熟練した操作で設備を操り、正確な裁断と共に布地が整然と落ちていく。縫製員の指が飛ぶように動き、細かい針目が布地の間を巧みに縫い進め、一着一着次々に仕上がっていく。山東省(Shandong)の「夏津経済開発区」にある衣料メーカー「費特製衣」の工場内には活気あふれる光景が広がっていた。

このロットは品質検査の後、折り畳まれ、包装され、タグ付けを経て、カナダ、日本、韓国、シンガポールなどの国々へ出荷される予定だ。

同社の責任者の田春麗(Tian Chunli)氏は「5月の米中経済協議の共同声明発表後、米国からの(高関税の90日間の一時停止による)注文前の相談や早期の仕入れ確保のアプローチが増えた。しかし、現在わが社は製品を10か国以上に輸出しており、注文は9月まで埋まっている。手元に注文があるから焦る必要はない。我々のペースで我々の仕事に集中していく」と淡々と説明する。

昨今の米国の関税濫用の状況でも、同社は数年前に比べてはるかに冷静な態度だ。それは、同社に2つの自信があるためだ。

最初の自信は、新規市場への「突破口」を開いたことだ。

同社は乳幼児向けを主力とするニット衣料のメーカーで、製品は主に海外に輸出されている。田氏は「米国は長らくわが社最大の市場で、現地の多くのブランドと提携している。米国からの注文は一時、輸出総額の95%以上を占めていた」と話す。

ところが、2018年の米中貿易摩擦の影響で、米国の顧客は中国製品の市場シェアを縮小し、一部のブランドは中国国内の事務所を相次いで閉鎖した。同社にとってこの影響は大きく、米国からの注文量が激減したという。

その時同社は、ただ回復を待つのではなく、積極的に変化を求め、突破口を探った。

「卵を同じ籠に盛るな」のことわざ通り、より多くの資源と労力を他の市場に投入し、多様で安定した販売チャネルを模索した。19年から同社は、ドイツ、フランス、日本など各国で開催される繊維製品見本市に頻繁に参加し、自社製品をアピールした。

田氏は「言語が通じない場合、翻訳ソフトを使って顧客とコミュニケーションを取り、製品の品質と誠意で多くの注文を獲得した」と話す。

そして同社の積極的な海外進出と市場開拓の努力が成果を上げた。23年には製品の過半数が米国以外の新しい市場に輸出されるようになった。今年最初の2か月間の米国向け輸出額は34万元(約697万円)で、これは売上全体の10%未満だ。

第2の自信は、技術革新とコスト削減・効率向上の成功だ。

良い製品こそが新たな市場を獲得できる。近年、同社は技術開発に注力し、革新的な加工技術を導入した。従来の純ポリエステル素材をベビーコットンのような柔らかく高機能な生地に仕上げ、抗菌・防臭・防汚性に優れた製品を開発した。こうした製品は各国の大きな市場で好評を博し、付加価値も大きく向上した。

田氏の説明によれば、同社はスマート化改造によって「敏捷製造」と「柔軟生産」を可能にするサプライチェーンを構築し、注文の仕分けから工程スケジュール管理までの全工程を管理できるシステムを確立した。リアルタイムで設備の状態、生産負荷、工程パラメーターを監視でき、生産効率が20%以上も向上したという。

未来を見据え、田氏には2つの期待がある。

1つ目は、中国国内市場でさらに多くの製品を販売することだ。最近、夏津県は地元の紡績企業を組織して、上海で開催された「2025中国国際紡績糸(春夏)展示会」に参加した。この時、田氏は国内の顧客数社と知り合いになり、今後の彼らとの協力関係の構築を計画している。

2つ目は、「一帯一路(Belt and Road)」市場を開拓し、パキスタン、マレーシアなどの市場への参入を実現することだ。田氏は「今年下半期には複数の国を訪問して、より多くの注文を獲得するつもりだ」と抱負を語る。

山東省は中国最大の紡織品輸出省で「費特製衣」のような企業は数多く存在する。頻繁に複雑に変化する外部環境に対応するため、ますます多くの輸出型企業が「座して死を待つ」受け身の姿勢を捨て、問題に向き合い困難に挑む姿勢を選択している。

山東理工大学(Shandong University of Technology)経済学院の張琳琛(Zhang Linchen)准教授は「企業は一方では国際市場開拓を強化し、販売先市場構成を多様化させ「越境Eコマース」という新業態の販売ルートを拡大し、国際マーケティング体系の構築を図る必要がある」と指摘する。また「新しい質の生産力」を育成して「バリューチェーン」のハイエンド部分を掌握することが重要だと強調している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews