【8月20日 AFP】世界で最も価値のあるバイオリンの一つで、約300年前に作られ、かつてイタリアの作曲家ニコロ・パガニーニが所有していたバイオリンが、英国最大級のクラシック音楽祭で演奏される。

この「カロダス」として知られるバイオリンは、ジュゼッペ・グァルネリ・デル・ジェスが作った約150本のうちの一つで、6月に慈善団体が2000万ドル(約30億円)で購入した。

1743年にイタリア北部のクレモナで製作されたこのバイオリンは、イタリアの作曲家でバイオリンの名手だったニコロ・パガニーニがかつて所有していた。

英ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで今月28日、英最大級の音楽祭「BBCプロムス」の一環として、韓国のバイオリニスト、ヤン・インモ氏によって演奏される。

「この楽器を演奏できることが信じられない。これは間違いなく、これまでに作られた最高の楽器の一つだ」と、初めてプロムスに出演するヤン氏はAFPに語った。

「この楽器を大切に扱い、美しい音を出す義務を感じている。こういった楽器は博物館の金庫にしまっておくのではなく、演奏することに価値があるということを人々に知ってもらいたい」

バイオリンを貸与する慈善団体「ストレットン協会」は、希少で価値のある楽器を取得し、世界の一流の音楽家に貸し出すことを目的にしている。

ストレットン協会の共同創設者ステファン・ヤンセン氏は、グァルネリはイタリアの弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリと並んで、史上最も重要なバイオリン製作者の一人だと話す。

ストラディバリが教会や貴族のために楽器を作ったのに対し、グァルネリのバイオリンは音楽家のために作られ、その深く豊かな音色で知られるようになったとヤンセン氏は説明する。

「インモは彼の世代で最も優れた音楽家の一人だ」とヤンセン氏はAFPに語り、「彼が私の家に来て、このバイオリンを見せたとき、最初の瞬間からぴったりだと分かった。結局のところ、化学反応も重要なんだ」と話した。

ヤン氏はパブロ・デ・サラサーテの「カルメン幻想曲」を演奏する予定で、これを「バイオリンのための名技曲」と表現した。

このバイオリンの広い音色のパレットが「カルメンの強く、時には挑発的な性格」を色付けてくれるとヤン氏は言う。

この楽器の音は「かなり予測不可能」で、「この気まぐれな性質が作品により生き生きとした感じを与える」と話し、「パガニーニがこの楽器を使っていたと考えると、ちょっと霊的な感じがするし、人々もパガニーニ自身のバイオリンで彼の音楽を聴きたいと思っていると思う」とヤン氏は付け加えた。(c)AFP