【三里河中国経済観察】自動車技術の主導権、中国へ
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【8月9日 CNS】世界の自動車技術の主導権は、いま「西から東へ」と急速に移りつつある。
6月12日、中国の小鵬汽車(XPeng)は、米エヌビディア(Nvidia)を上回る性能を持つ自社開発の自動運転チップを発表し、フォルクスワーゲン(Volkswagen)などが最初の採用候補になる見通しを示した。
6月20日には、アウディ(Audi)の新型A5Lが予約販売を開始。宣伝ポスターでは、「華為技術(ファーウェイ、Huawei)の乾崑(Qiankun)スマート運転システム」が主要な売り文句として大きく掲げられた。
こうした「伝統的自動車メーカー+中国技術」という新たな組み合わせは、世界の自動車産業で静かに常態化しつつある。
今年に入り、BMW、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)、ステランティス(Stellantis)などの多国籍メーカーは、中国の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、華為、上海蔚来汽車(NIO)、小米科技(シャオミ、Xiaomi)などと提携を加速させ、中国の技術を積極的に取り入れて電動化・スマート化への転換を進めている。
この流れは、十数年前に中国の自動車産業が海外技術に依存していた状況とは対照的だ。いまや世界の自動車メーカーは、中国技術への依存度を深め、「中国発のソリューション」を未来戦略に組み込み始めている。
では、なぜ自動車技術の「主導権」は中国メーカーの手に渡ったのか。
中国人民大学(Renmin University of China)・重陽金融研究院の研究員である劉英(Liu Ying)氏はこう話す。「新エネルギー車分野では、伝統的な大手自動車メーカーは革新が少なく動きも遅かった。一方で、中国企業は一気に追い抜きを果たした」
劉氏はその理由として、中国の巨大市場が技術開発と実証の場を提供すること、そして強大な製造基盤が発展を支えていることを挙げた。
一方、内燃機関車時代に築かれたエンジンやトランスミッションといった技術優位は、電動化・知能化の波の中で急速に価値を失いつつある。
復旦大学の丁純(Ding Chun)教授は、「例えばドイツの自動車メーカーは、情報技術を従来の製造に活用しようと試みてきましたが、既存の仕組みに縛られて効果は限定的でした。大企業の転換には痛みが伴います」と指摘した。
その一方で、中国メーカーは10年以上にわたる継続投資により、自動運転、デジタルコックピット、動力電池といった分野で新たな技術的優位を築いてきた。
動力電池では、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪汽車(BYD)が高いエネルギー密度や航続性能を武器に世界市場の半分を占め、トヨタ自動車(Toyota Motar)やテスラ(Tesla)などに供給している。
自動運転では、華為や小鵬のソリューションがメルセデス、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなどに採用されつつあり、デジタルコックピットでも中国の独自技術は世界の参考例となっている。
こうした動きにより、中国の自動車技術は世界のイノベーションネットワークを再構築しつつある。BMWやフォルクスワーゲンなどは、中国に海外最大規模の研究開発拠点を設置し、中国市場向けの開発成果をグローバル戦略にも生かしている。
フォルクスワーゲン(中国)副総裁の劉雲峰(Liu Yunfeng)氏は、「中国は自動車産業の『トレーニングジム』のような存在だ。電動化、デジタル化、自動運転の分野で世界をリードしており、中国で培った経験と技術がフォルクスワーゲンの変革を後押ししている」と語った。
かつてはアウディの技術者が中国に学びに来ていたが、いまや小鵬の技術がフォルクスワーゲンを支える時代になった。中国は自動車の「技術輸入国」から「技術輸出国」へと躍進したのである。
さらに、中国は世界最大の自動車消費市場であるだけでなく、技術革新の源泉、サプライチェーンの中核、業界標準の策定者としての地位を固めつつある。
あるドイツ企業のCEOは「世界の自動車メーカーが新エネルギー車を発展させるには、中国に来ることが不可欠だ。『東から学ぶ』ことが世界の流れになる中で、中国技術の急行列車に誰が早く乗るかが、未来への到達速度を決める」と語った。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News