【8月8日 CNS】7月1日に開かれた中国共産党中央財経委員会(中央財経委員会)第6回会議で、全国統一市場の本格構築に向けた「ロードマップ」が示された。

清華大学(Tsinghua University)中国発展計画研究院の董煜(Dong Yu)常務副院長は「全国統一市場の建設を加速する中央の方針は、経済主体の信頼を安定させ、ひいては経済全体の安定にも大きな役割を果たす」と語った。

全国統一市場の取り組みは、2022年に「全国統一市場の加速的構築に関する意見」が発表され、今年に「全国統一市場建設ガイド(試行)」が公表されるなど、一歩ずつ進んできた。今回の会議は、その動きをさらに強化するものとなった。

■低価格競争の是正へ

会議は、いわゆる「内巻(過剰競争)」や地方政府による無秩序な投資誘致といった市場の問題点に焦点を当て、具体的な対策を打ち出した。

「企業による低価格・無秩序な競争は法令に基づき是正し、製品品質の向上を促す。過剰生産能力は段階的に退出させる。地方の投資誘致は情報を開示し、透明性を確保する」――こうした方針は、いま市場が直面する課題を直接的に突いた内容だ。

近年、自動車分野などでの価格競争が注目されており、中央は繰り返し改善を求めてきた。

南京大学(Nanjing University)長江産業発展研究院の劉志彪(Liu Zhibiao)常務院長は「低価格競争を正すには基準の明確化が不可欠で、企業の健全な競争には非常に重要だ。地方政府の投資誘致に伴う補助金も、透明化と公開が必要だ」と述べた。

■経済体制の根本課題に対応

全国統一市場の構築は、中長期的に財政・税制の仕組みや幹部評価制度の問題を避けて通れない。

会議では「市場統一に資する財税制度や統計制度、信用体系を整備する」「幹部は正しい政績観を持ち、高品質な発展を重視する評価制度を確立する」と打ち出した。

劉志彪氏は、税制面では「中央と地方の財政関係をさらに整理し、地方が消費分野への投資を増やすことで市場活力を引き出す必要がある」と指摘する。

また、従来の幹部評価は財政収入やGDP成長を重視してきたことが、市場での過剰競争の要因になった。劉氏は「地方政府が規模拡大を追求する中、企業は無理に生産を拡大し、供給過剰や低価格競争が生まれた。評価制度を見直し、科学的な政績観を確立することこそが、市場建設の深層課題を解決し、経済を質の高い成長へ導く鍵だ」と語った。

■国内開放の重視

会議は、全国統一市場を深化させるうえでの基本条件として「五つの統一と一つの開放」を提示した。すなわち、①市場の基礎制度、②市場インフラ、③政府行為の基準、④市場監督・執法、⑤要素・資源市場の統一に加え、内外への開放を継続するという方針である。

劉志彪氏は「ここでの国内開放とは、国内の国民や民営企業を含むあらゆる所有形態の企業への開放を指す。国際経済の環境が厳しい今、これは全国統一市場を支える重要な柱になる」と説明した。

中国は14億人の人口を擁し、4億人以上が中間所得層という巨大な国内市場を持つが、その潜在力を十分に生かしきれていない面もある。

今回、中央が全国統一市場をさらに推し進めるのは、この「大きな市場」を「強い市場」へ育て、事業者の信頼を高め、経済に安定をもたらす狙いがある。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News