【9月5日 東方新報】中国政府は7月28日、「育児補助制度実施方案」を発表した。これにより、2025年1月1日から、法令に従って出生した3歳未満の乳幼児に対し、子ども1人あたり年間3600元(約7万4252円)の補助金を支給することが明確になった。補助は子どもが満3歳になるまで継続される。

2025年1月1日以前に生まれた3歳未満の乳幼児も対象となり、残りの月数に応じて補助額が按分される。申請は、乳幼児の戸籍所在地で行うこととされている。

新華社通信(Xinhua)は、この制度を「全国規模で直接現金を支給する重要な民生政策」と位置付け、育児家庭の経済的負担を軽減する効果が期待されると伝えた。

■これまでの地方の取り組みと違い

これに先立ち、各地では出生・育児支援策やインセンティブ制度の整備が進められていた。国家衛生健康委員会の統計によると、2024年10月時点で全国23省が生育補助制度を試行している。

これまでの地方制度は、多くが二人目・三人目の子どもを対象としていた。

例えば、雲南省(Yunnan)や寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)では、二人目・三人目の子どもを対象に一時金や年額制の育児補助を実施している。浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)、四川省(Sichuan)攀枝花市(Panzhihua)なども同様に、出生順に応じた補助金を支給してきた。

一方で、一人目の子どもにも補助を認める例は少なかった。

2023年には浙江省温州市が、一人目から三人目まで一律で一時金を支給する制度を導入。内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)のフフホト市(Hohhot)や河南省(Henan)鄭州市(Zhenghzou)も、一人目の出生に対して補助を行う仕組みを設けている。広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)では、一人目から三人目まで段階的に一時金を支給する案が検討されている。

■専門家「一人目への補助は出産の不安軽減につながる」

今回の国レベルでの制度化により、一人目の出生でも補助金を受け取れるようになった点が注目される。中国人口・発展研究センターの賀丹(He Dan)所長は、「一人目から三人目まで全て対象とし、金額も同じとすることで、三人っ子政策下の家庭支援を完全にカバーし、政策の公平性と普遍性が反映されている」と評価した。

首都経済貿易大学(Capital University of Economics and Business)の姜全保(Jian Quanbao)教授は、「一人目は家庭の出産決定において最も重要な段階であり、一人目から補助対象にすることは、若い夫婦の出産に対する心理的ハードルを下げる効果がある」と述べている。

広東省人口発展研究院の董玉整(Donf Yuzheng)院長も、「一人目こそが出生政策の基盤であり、出産の奨励は一人目から始まるべきだ。出生順位にかかわらず、出産した家庭を積極的な出生支援の対象に含めることが重要だ」と指摘している。

■中央と地方の連携で多層的な支援へ

今回の実施方案では、補助金は子ども1人あたり年間3600元が基準で、中央政府が地域ごとに応じた財政補助を行う。地方政府は、財政状況に応じて上乗せすることも可能で、その分の財源は地方が負担する。

姜全保教授は、「国家の制度を基盤に、地方は経済力や人口構造に応じて差別化した補助を追加できる」と述べ、中央と地方の協力による多層的で立体的な出生支援政策の形成を強調した。

また、首都経済貿易大学の茅倬彦(Mao Zuoyan)教授は、「育児補助は、子育て世帯の経済的負担を軽減し、出産意欲を安定させ、人口構造の改善に寄与する重要な政策だが、単独では十分ではない。産休、保育、教育、住宅などの政策と連携する必要がある」と指摘している。

近年、各地で出産・育児支援政策の整備が進み、質の高い妊産婦・育児サービスの提供が強化されてきた。

今回の育児補助に加え、2025年の政府活動報告では、乳幼児保育と幼児教育の一体的な整備、普及型保育サービスの拡充、段階的な無償の就学前教育の導入も盛り込まれている。(c)東方新報/AFPBB News