【三里河中国経済観察】中国、巨大な「消費大国」への転換進
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【8月1日 CNS】中国はすでに15年連続で世界最大の製造業国としての地位を保ち、名実ともに製造大国となっている。いま、その強固な基盤の上で、中国経済は大きな転換期を迎えており、超大規模な「消費大国」への道を歩み始めている。年間の消費規模はおよそ50兆元(約1031兆6800億円)、投資額も50兆元を超え、輸入は20兆元(約412兆6720億円)以上に達する。中国は世界第2の消費市場であり、輸入市場でも世界有数の規模を誇る。
こうした転換が重視される背景には、国内需要の不足がある。2024年における最終消費支出の経済成長への寄与率は44.5%にとどまった。世界銀行の統計によると、2023年の世界平均は56.5%であり、高所得国は58.7%、中所得国でも52%だが、中国は39.6%と低い水準にある。経済の安定成長には、消費をより確実に主力エンジンとして機能させる必要がある。
2025年の政府活動報告では、内需、とくに消費を強化し、経済成長を支える「主動力」と「安定の支柱」とする方針が示された。投資・消費・輸出という三本柱のうち、投資は質重視に転じ、輸出は外部環境の圧力を受けるなかで、消費への期待は一層高まっている。
消費大国への転換は、単なる景気刺激策ではなく、戦略的な選択でもある。外需は国際情勢に大きく左右され、2020年以降の世界貿易の急激な変動がそれを証明した。米国による関税の乱発で世界経済の安定が揺らぐ中、内需の強化は外部リスクを和らげる「定海神針」となり得る。また、成熟した消費大国は国際市場における影響力も増し、消費の傾向やスタイルは世界の貿易構造に影響を及ぼし、中国経済の国際的な発言力の強化にもつながる。
国内の視点でも、消費の拡大は民生向上の鍵を握る。衣食住といった従来型の需要に加え、スマート端末や文化コンテンツなど新しい消費も拡大している。消費の活性化はサービス業など幅広い分野の成長を促し、雇用を創出し、住民の所得増につながる。
この変革を実現するには、まず政策による後押しが欠かせない。経済政策はすでに民生重視・消費促進へと重点を移しており、消費拡大によって経済の循環を滑らかにし、消費の高度化によって産業の高度化を促す方針だ。住民が「消費できる」「消費したい」「消費をためらわない」環境を整えることが中核となる。収入増加のための仕組みづくりや、医療・年金・教育などの社会保障の充実、安心して消費できる市場環境の整備が同時に進められている。
供給面でも質の向上が求められる。個性化・高品質化が進む消費に応えるため、中国は健康、介護、育児支援、家事サービスなど多様なサービスを拡充し、デジタル・グリーン・スマート分野の新しい消費を加速させている。2024年春から実施されている買い替え促進策も、消費の押し上げに寄与した。
さらに、中長期的な制度改革も不可欠だ。財税制度の改革はその一つであり、長年生産段階で徴収されてきた消費税を消費地に移す方針は、地方政府が地元消費を促進する動機を高め、「投資偏重・消費軽視」の傾向を改める狙いがある。全国統一市場の整備も進められており、生産から流通・消費までの経済循環をより円滑にし、消費力を引き出すことが期待される。
製造大国から消費大国への飛躍は、中国経済にとって必然の流れであると同時に、国民生活の質を高める決定的なステップでもある。この戦略的な転換は、今後の中国経済の姿を大きく変えることになるだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News