【7月31日 CNS】中国第2位の経済大省・江蘇省(Jiangsu)が、第1位の広東省(Guangdong)に急速に迫っている。2025年上半期の経済データを見ると、両省の成長率の差は明らかに縮小している。

江蘇省の上半期GDPは6兆6967億8000万元(約137兆7761億円)で前年比5.7%増、一方、広東省は6兆8725億4000万元(約141兆3818億円)で前年比4.2%増だった。

この結果、両省のGDP差は1757億6000万元(約3兆6157億円)と、2024年同期の1916億2000万元(約3兆9420億円)からさらに縮小。これは過去6年間で最も差が小さい水準だ。

全国経済の地図において、江蘇省はここ数年、安定的な成長を維持しており、着実に広東省との差を詰めている。

外部環境が不安定ななか、江蘇省がこれほどの追い上げを見せた要因の一つが、強力な工業部門の成長だ。

2025年上半期、江蘇省の大規模企業の付加価値は前年比7.4%増。全国平均を1ポイント上回っている。13の地級市すべてでプラス成長を記録し、足を引っ張る都市は一つもなかった。

この全域的な成長は、江蘇省が製造業に力を入れてきた成果だ。戦略的新興産業の割合が着実に上昇し、新たな成長力が形成されつつある。

蘇州市(Suzhou)のバイオ医薬、常州市(Changzhou)の新エネルギーといった産業クラスターが続々と新たな原動力を生み出している。上半期、江蘇省におけるハイテク産業の生産額は、工業全体の51.8%を占め、前四半期より0.4ポイント増加した。

「輸出」というもう一つの成長エンジンも力強さを示した。

関税問題など外的逆風がある中、江蘇省の上半期輸出額は9.4%増の1兆8800億元(約38兆6753億円)に達し、経済成長の主要なけん引役となった。

一方、外貿大省である広東省も輸出入総額・輸出・輸入ともに過去最高を記録したものの、輸出増加率はわずか1.1%にとどまった。また、消費も江蘇経済の好調を支える柱の一つだ。

「蘇超(江蘇省内の都市サッカーチームによるスーパーリーグ)」の人気はSNSでも大きな話題となり、住民のスポーツ熱を高めただけでなく、スタジアム周辺の飲食、リテール、観光消費を活性化させ、消費市場を盛り上げている。

こうした活況は、住民の収入増に裏付けられている。江蘇省では、上半期の一人当たり可処分所得が前年比5.2%増の3万706元(約63万1683円)に達した。

江蘇省の特筆すべき強みの一つが、地域のバランスの良さだ。

広東省の珠江デルタ地域が突出しているのとは対照的に、江蘇省の経済は全域にバランスよく広がっている。明確な経済の「空白地帯」が見当たらない。

13の設区市すべてが全国都市ランキング「百強」に入り、蘇州市・南京市(Nanjing)・無錫市(Wuxi)・南通市(Nantong)・常州市はGDPが1兆元(約20兆5720億円)を超える「兆元都市」となっている。このような均衡成長は全国でも非常にまれだ。

また、蘇北と蘇南の地域格差も縮まりつつあり、「研究開発は蘇南、製造は蘇北、物流は全省に」という協力体制が形成されている。

昆山市(Kunshan)、江陰市(Jiangyin)、張家港市(Zhangjiagang)といった県級市は、それぞれの産業優位性を活かして、常に全国百強県の上位にランクインしている。

このような「全域協同型」の成長モデルは、江蘇経済に高いリスク耐性と広範な成長余地をもたらしている。こうした背景から、「蘇大強(強い江蘇)」は着実に成長速度を上げている。

このままいけば、江蘇省の2025年のGDPは14兆元(約288兆円)を突破する見通しで、両省の競り合いはさらに拮抗した局面に突入する可能性が高い。もっとも、経済の競争は単なる数字の勝負ではなく、総合的な実力の戦いだ。

広東省は、科学技術や金融分野において今なお優位を保ち、深センの技術革新力や広州の商業的影響力は大きな強みとなっている。

江蘇省としては、製造業の強みと地域協調の成果を維持しつつ、さらに科学技術革新や高付加価値サービス分野の強化を図り、経済の質的向上を目指す必要がある。

中国の経済をけん引する2つの巨大省の競争は、結果の勝敗にかかわらず、双方の成長の質を高め、中国全体の高品質な発展に寄与していくだろう。なぜなら、健全な競争こそが進歩を促す最良の原動力だからである。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News