【6月11日 AFP】香港警察は、中国共産党(紅軍)政権の転覆を試みることができるモバイルゲームのダウンロードは国家安全維持法(国安法)上の犯罪に該当する可能性があると警告した。このゲームは11日、米IT大手アップルのアプリ市場「香港アップストア」から削除された。

中国政府は、わずかな反対の兆候にも極めて敏感で、2020年には香港で国安法を施行し、あらゆる政治的反対意見を事実上封殺した。

台湾に拠点を置く企業が開発した「逆統戦:烽(とぶひ)」では、プレーヤーは台湾、香港、モンゴル、チベット、カザフ、ウイグルなどのいずれかの勢力に「忠誠を誓い」、「共産党政権を転覆させる」ことができる。

このゲームは歴史的に異なる世界を舞台としているが、説明には「このゲーム世界は現実です。登場する国家・政権・民族等は全て現実であり、実在のものとは強い関係があります」と記載されている。

香港警察は10日、「逆統戦:烽」が「ゲームを装って」「武装革命」を唱道し、台湾と香港の独立を扇動していると述べた。

このゲームをダウンロードすると、扇動的な資料を所持しているとして訴追される可能性があり、アプリ内購入を行うと、開発元に「分離独立や政府転覆の実行」のための資金を提供しているとみなされる可能性がある。また、このゲームを推奨すると、「分離独立の扇動」罪に当たる可能性がある。

プレーヤーは人民共和国に忠誠を誓い、紅軍を率いて「すべての敵を倒す」こともできるが、ゲームの説明では、人民共和国が悪役であることが明確に示されている。

紅軍は「高圧的な統治に逆戻り、暗愚(あんぐ)な指導者の下、勢力範囲を拡張する国策に切り替え、意図的に民族大量虐殺を行い、規律が崩壊した軍は腐敗を極め、搾取、殺戮(さつりく)、暴行をほしいままに犯す」と表現されている。

他の多くの勢力は、中国が自国の領土であると主張する台湾や、中国がイスラム教徒の少数民族ウイグル族に対する人権侵害を行ってる疑いがある新疆ウイグル自治区など、中国政府にとっての争点となっている問題に関係している。

香港の活気ある市民社会と政治的反対勢力は、2019年の大規模で時に暴力的な民主化デモを受けて国安法が施行されて以来、消滅したも同然となっている。

AFPの記者が確認したところによると、このゲームは10日には「香港アップストア」で配信されていたが、アップルは11日に削除したようだ。

現地メディアによると、米IT大手グーグルのアプリ市場「グーグルプレイ」香港版では10日の時点で配信されていなかった。

だが、開発元は、10日の香港警察の発表以降、検索数が急増したとして、認知度向上について当局に感謝していると冗談めかして述べた。(c)AFP