【6月3日 東方新報】中国・重慶市(Chongqing)に、数万人の「赤いシャツの消費者」が集まる見通しとなっている。6月10日、国足(中国代表)がバーレーンと対戦するFIFAワールドカップ・アジア3次予選の最終戦が、重慶市で開催される。6月5日に行われるインドネシア戦が事実上の「生き残り戦」であるにもかかわらず、重慶での試合はすでに「入手困難な一戦」となっており、周辺のホテル予約も急増している。

 5月22日、国足サポーター組織「龍之隊」が専用アプリとミニプログラムで会員向けに応援席チケットを販売開始すると、瞬時にアクセスが集中し、プラットフォームはダウン状態に陥った。翌23日に一般向けのチケット販売が始まると、販売開始からわずか15分で全席種が完売した。

 この試合が行われる両江新区竜盛地区にある重慶竜興サッカースタジアムには6万席が用意されており、当日は数万人の観客が現地で試合を観戦する見込みである。

 試合の盛り上がりに連動して、重慶への航空券やホテルの予約も好調だ。旅行サイト「去哪儿(Qunar)」のデータによると、6月8日から10日に重慶に到着する航空券の予約は昨年同期比で約10%増加、6月8日から12日のホテル予約は20%増となっている。特に、竜興サッカースタジアム周辺ではホテル予約数が前週比で20倍以上に跳ね上がり、商業エリアとしても6月の人気トップ圏に浮上している。

 観戦と旅行をセットにするスタイルは、多くのファンの間で定着しつつある。今予選でも、遼寧省(Liaoning)大連市(Dalian)、山東省(Shandong)青島市(Qingdao)、福建省(Fujian)アモイ市、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)といった都市で行われた国足の試合はいずれも、地元の観光や消費を大いに活性化させた。

 工業情報化部の専門家委員でもある経済学者・潘和林(Pan Helin)氏は、サッカー観戦は大規模かつリアルな社交活動であり、多くの人が「旅行+観戦」の形で参加することから、消費意欲も高く、地域経済にチャンスをもたらすと述べる。

 今回、代表戦が開催される重慶自体も、すでに人気観光都市として知られている。「全国市轄区観光研究報告2025」によれば、観光力トップ100に重慶から8区が選ばれており、中国最大の口コミサイト「大衆点評(Dazhong Dianping)」の「必訪ランキング」でも、重慶の観光地は全国上位にランクインしている。

 さらに今年は、「8D魔幻都市」というユニークな都市イメージに加え、ユーチューブ(YouTube)で3700万人以上の登録者を誇る人気配信者IShowSpeed(中国語では「甲亢哥<Jia Kang Ge>」)の中国全国巡回イベント、名物の「栄昌鹵鵝(煮込みガチョウ)」や「ビルを通るモノレール」など、SNSで度々注目を集めてきた。

 潘和林氏は、重慶がその歴史的背景や独特の自然環境、四川・重慶文化の伝統と現代的なクリエーティブ要素を融合させた観光体験を提供することで、大きな成長を遂げていると評価する。

 国足の試合と人気観光地・重慶との組み合わせがどんな化学反応を起こすかにも注目が集まる。潘氏は、今回のようにスポーツと観光都市の要素が重なり合うことで、都市への集客力が高まり、W杯予選というイベントを通じて都市のイメージ向上も見込めると指摘。また、サッカーを中心とした新たな消費シーンが生まれる可能性もあるという。

 観戦客に対する良質なサービスは、地域経済を活性化させるだけでなく、都市の観光業の評価にもつながる。これがスポーツイベントの持つ力であると潘氏は述べる。

 旅行ビッグデータ研究院の研究員・蔡木子(Cai Muzi)氏によれば、重慶の観光熱は地域によって差がある。長年人気を誇るのは解放碑/洪崖洞、観音橋/九街、上清寺/人民大礼堂/李子壩などの商業エリアである。一方、竜興地区はこれまであまり注目されてこなかったが、今回の代表戦によってホテルや飲食店の売上が急増し、スポーツイベントが「非観光地帯」の経済にも波及することが実証された。

 開催地である両江新区は、観光客を呼び込むための具体策も打ち出している。「約惠両江 碰見世界杯(お得な両江で、W杯と出会おう)」と題したキャンペーンを立ち上げ、150万元(約2998万6200円)分の消費クーポンを配布予定で、試合チケットを提示すれば指定店舗で割引を受けられる。さらに、重慶歓楽谷、国際映画村などの観光地でも入場料割引を実施する。

 6月1日には、「W杯応援ラン」として6.1キロのジョギングイベントも開催され、サッカーファンやスポーツ愛好者が一堂に会して中国代表を応援する。また、6月10日には竜興スタジアムに隣接する「協同イノベーションゾーン」およびホテル街にてスポーツ市が開催され、60平方メートルの大型LEDスクリーンで試合のパブリックビューイングも行われる予定だ。(c)東方新報/AFPBB News