【5月30日 AFP】アルゼンチンの裁判所は29日、サッカー同国代表の伝説ディエゴ・マラドーナ氏の死をめぐる医療チームの審理について、疑惑のドキュメンタリーシリーズを理由に無効との判断を下した。

2020年にマラドーナ氏が医療ミスで死亡したとされるこの裁判は、数週間にわたる聴聞や40人以上からの証言などですでに長引いていたが、新しい裁判官3人の下で最初からやり直しとなった。

この審理の裁判官だったフリエタ・マキンタッチ氏(47)は先日、この裁判をテーマにしたドキュメンタリーシリーズへの関与が明らかになり、倫理規定に違反する可能性があるとして、自ら担当を下りることを余儀なくされた。同僚の判事であるマキシミリアーノ・サバリーノ氏はこの日、マキンタッチ氏の行動が「偏見を引き起こした」として、裁判を無効とした。審理ではマラドーナ氏の娘らから痛ましい、時には涙ながらの証言が行われていた。

史上最高のサッカー選手の一人と評価されるマラドーナ氏は、2020年11月、脳血腫の除去手術からの回復中に心不全と急性肺水腫を起こし、60歳で死亡した。裁判では、自宅で介護を担当した7人の医療チームが「重大な過失」を問われている。

問題のドキュメンタリー番組の映像には、法廷内で無許可に撮影された場面が含まれているとみられ、これにマキンタッチ氏が関与した疑惑が浮上した。同氏は不正行為を否定したものの、裁判を1週間中断して警察が家宅捜索を行った結果、その行動に疑問を投げかける証拠が明らかになった。

27日に裁判所で上映された「神の裁判官」と題された番組の予告編では、マキンタッチ氏がハイヒールで法廷の廊下を歩く姿が映し出された。この映像は法廷内で無許可で撮影されたもので、同氏がカメラの前でインタビューを受ける様子が映っていたことから騒動となった。

マキンタッチ氏は職務停止となり、現在は公平性要件への違反や影響力の乱用、収賄の疑いなどで司法の懲戒機関によって調査対象となっている。(c)AFP