パレスチナ人が村放棄、イスラエル人入植者の度重なる攻撃受け ヨルダン川西岸
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【5月23日 AFP】イスラエル占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸にある村のパレスチナ人住民らは22日、イスラエル人入植者による度重なる攻撃を受け、荷物をまとめて村を離れる準備を始めたとAFPに語った。
ラマラの東にある小村マグヘイヤーアルデイルの住民、ユセフ・マリハトさんはAFPに対し、村人たちは入植者による暴力の前に無力感を覚え、村を離れることに決めたと語った。
アラブの伝統的なヘッドスカーフ「カフィーヤ」を身に着けたマリハトさんは、羊やヤギを囲うために使われていた金網フェンスをトラックに積み込みながら、「誰も私たちを守ってくれない」「彼ら(イスラエル人入植者)は家々を破壊し、追放するぞ、殺すぞと私たちを脅してきた」と述べた。
数百メートルしか離れていない新しい入植地からは、イスラエル人入植者たちがマリハトさんを見張っていた。
ヨルダン川西岸には、パレスチナ人約300万人が暮らす一方、国際法違反とみなされている入植地に約50万人のイスラエル人も居住している。
イスラエル政府の許可なく建設された「アウトポスト」と呼ばれる非公式の入植地は、時には一夜にして建設される。こうした入植地はイスラエル法でも違法とされるが、法が執行されることはほとんどない。
イスラエル軍はAFPの取材に対し、マグヘイヤーアルデイルの「アウトポスト」の合法性について「調査中」だと回答した。
イスラエルの平和活動家、イタマル・グリーンバーグ氏は22日にマグヘイヤーアルデイルを訪れ、「今起きていることはとても悲しい。たとえ(イスラエル政府が承認していない)アウトポストであってもだ」と述べた。
「ここは村の最も外れにある家からわずか60メートルしか離れていない、新しいアウトポストだ。18日に入植者から、『ベドウィン(アラブ遊牧民)は1か月後にはここからいなくなる』と言われたが、実際にはもっと早くそうなった」とAFPに語った。
パレスチナ自治政府(PA)の「植民地化・壁抵抗委員会」は、マグヘイヤーアルデイルの住民が移住を余儀なくされたのは「入植者を装った民兵によるテロリズム」の結果だと非難した。
同委員会は声明で、他の29か所のベドウィンの村も同様の運命をたどったと明らかにした。ベドウィンの村は小規模で、地方部に孤立しているため、より脆弱(ぜいじゃく)な状況に置かれているという。
マグヘイヤーアルデイルはラマラの東、ヨルダン渓谷に向かって下る丘陵地帯に位置する。最近、他のいくつかのベドウィン村の住民が避難を強いられた後、最後に残った村の一つだった。
マグヘイヤーアルデイルの村民124人は、今後、近隣地域に散り散りになる。
マリハトさんはAFPに対し、一部の村民は10キロ余り離れたキリスト教徒の村タイベに、残りの村民はラマラへ避難するだろうと述べた。
帰還できるか分からないため、村人たちは家具、灌漑(かんがい)用パイプ、干し草の束など、積み込めるだけの家財をトラックに積み込んだ。(c)AFP