【5月7日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領は5日、中国などでのウイルスの感染力や毒性を高める「機能獲得研究」への助成金を停止する大統領令に署名した。トランプ政権は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)の起源は、この実験を行っていた中国の研究所からの流出だと主張している。

ロバート・F・ケネディ・ジュニア厚生長官はX(旧ツイッター)で、「流出のリスクを免れる研究所など存在しない。今回の措置は、将来、不注意による流出が発生し、人類を危険にさらすのを防ぐためのものだ」と説明した。

国立衛生研究所(NIH)のジェイ・バッタチャリア所長は、「新型コロナウイルスのパンデミックの際に見られたように、こうした研究に従事する国は自国民だけでなく、世界を危険にさらすことになる」と付け加えた。

トランプ氏は長年、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)について、中国・武漢ウイルス研究所から機能獲得研究の結果として流出した説を唱えてきた。これは、同市内の海鮮市場で野生動物から人に自然感染した説に代わるものだ。

NIHは2010年代、米国に本拠を置く非営利団体エコヘルス・アライアンスを通じて武漢ウイルス研究所のコウモリコロナウイルス研究に資金を提供していた。この助成金は2020年、第1次トランプ政権によって打ち切られたが、ジョー・バイデン前政権によって部分的に復活していた。

事態を複雑にしているのは、バイデン前政権で首席医療顧問を務めたアンソニー・ファウチ氏が、武漢での研究は連邦政府が定める機能獲得研究の要件を満たしていないと主張していることだが、一部のウイルス学者や米国の当局者らはファウチ氏の主張に異議を唱えている。

トランプ氏の大統領令は、機能獲得研究を支援すべきではない「懸念国」の例として中国を名指ししている。(c)AFP