【4月18日 CNS】「バーシーダーバン!」(四川方言で「とても気持ちいい」の意)──金杉憲治(Kenji Kanasugi)駐中国日本大使は、中国で口水鶏(ヨダレ鶏)、麻婆豆腐、水煮魚(白身魚を辛味のきいたスープで煮込み)などの四川料理を味わい、そのおいしさを四川語で表現した。これは金杉大使が最近、中国のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」に投稿した動画の一コマであり、彼は中国料理を楽しむ一方で、日本の食文化についても中国のネットユーザーに紹介している。最近では、金杉氏のリクエストに応じて、日本の懐かしいお菓子を紹介する動画も話題となった。

 中日両国の食文化が比較的近いこともあって、日本料理は中国で高い人気を誇る。日本経済新聞(Nikkei)によると、2023年時点で中国国内の日系大手外食チェーンの店舗数は約7万8千軒にのぼり、2位の米国を大きく上回った。近年は複数の日本飲食ブランドが中国で1号店をオープンし、中国市場での展開を加速させている。

 2023年8月、回転寿司チェーンの「スシロー(Sushiro)」は北京市の西単大悦城に初出店し、開店直後から長蛇の列ができた。飲食業界全体が冷え込む中でも、同店は北京で屈指の「行列ができる店」となり、6時間待ちという例も珍しくなかった。現在、北京市内ではスシローが4店舗に増えたが、人気は衰えず、オンライン予約も2週間先まで埋まっている。地域の生活情報プラットフォームでは「日式料理人気ランキング」の第1位に選ばれている。

 スシローの人気の背景には「高コスパ」がある。オンライン情報によれば、北京の4店舗の平均客単価はいずれも150元(約2936円)以下となっており、価格に敏感な消費傾向が強まる中、手頃な価格の回転寿司は中国の消費者に歓迎されている。同様に、ゼンショーホールディングス(Zensho)傘下の「はま寿司(Hama-sushi)」も2024年1月に北京に進出し、高い支持を得ている。

 スシロー北京店の下の階にある日系のハンバーグ専門店「肉肉大米」は、看板メニューのハンバーグと1人あたり80元(約1566円)前後の客単価で、こちらも連日行列の人気店となっている。2022年11月、上海市でオープンした1号店はわずか100平方メートル、38席の店舗ながら、1日22回転という驚異的な回転率を記録し、業界の注目を集めた。

 肉肉大米は、客の目の前で調理を行う臨場感や演出感、栄養バランスを考慮したメニュー構成、そしてSNS映えするビジュアルによって人気を得ている。中国のSNS「小紅書(Red)」では、同ブランドに関する投稿が6万件を超えている。

 このブランドを展開する物語コーポレーション(The Monogatari Corporation)は「中国で最も大きな市場は、『おかずと一緒に白米を食べる』という文化だ」と分析している。2023年10月、同社は上海に天ぷらの専門店「天天・天婦羅」を新たに開店し、ターゲットを20〜30代の女性に設定した。こちらも肉肉大米と同様、目の前での調理、できたての料理、手頃な価格で集客している。

 さらに、一度撤退した日本ブランドも再び中国市場に戻ってきている。2020年に新型コロナウイルスの影響で撤退したワタミ(WATAMI)の「和民居酒屋」は、焼き鳥人気の波に乗って2023年に深セン市(Shenzhen)で新ブランド「三代目鳥美羅」を立ち上げ、再進出を果たした。讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」も、2022年8月に中国店舗をすべて閉鎖したが、同年12月には再進出を発表し、2028年3月までに中国国内で数百店舗を展開する計画を打ち出している。

 中国の巨大な市場は日本の外食産業にとって非常に魅力的だが、同時に競争も激しさを増している。業界関係者は、今後も日本のローカルブランドが中国進出を進めることで、日系外食の競争がさらに激化すると予測している。特に市場での上位グループが形成されるにつれ、他のブランドは差別化されたポジショニングによって生き残りを図らなければならないと指摘している。(c)CNS/JCM/AFPBB News