【2月26日 CNS】電動二輪車は中国で「小電驢(Xiao Dian Lv)」という愛称で親しまれている。環境に優しく、利便性が高いため、中国国内で短距離移動の主要な交通手段となっている。さらに、その人気は海外にも広がり、2024年には中国の電動バイクと電動自転車の輸出額が初めて400億元(約8兆3148億円)を突破した。

■かつての苦境:事故多発と品質問題

「中国の技術は別次元だ」と2024年ペルーの首都リマで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議(サミット)でペルーの参加者が絶賛したが、数年前までの中国の電動二輪車の評判は芳しくなかった。品質管理の問題から、バッテリーの不良率が高く、室内での充電や技術改造による火災や事故が頻発していたため、国内でも安全性が懸念されていた。

 これを受け、中国は2024年から電動二輪車産業の全面的な整頓に着手した。安全監視システムの強化、新しい国家基準の導入、屋外充電スタンドの設置などを行い、その結果、事故による損失は前年比で90パーセントも減少した。

■今や「中国ブランドの光」として躍進

 品質向上を果たした中国の電動二輪車産業は、健康的な成長軌道に乗り、技術革新を加速させている。高級化・スマート化のトレンドが顕著に現れている。

 遠隔通信制御、動的安全監視、北斗(Beidou)ナビゲーションなどのスマートネットワーク技術、新型三電システム、防火材料、高性能合金鋼などを採用し、技術の進歩が著しい。2024年11月のミラノモーターサイクルショー(EICMA)では、中国の「雅迪(Yadea Technology Group)」がヨーロッパ市場向けに特別設計した電動バイクを発表。タイヤ圧モニタリング、GPSナビゲーション、スマートフォンでの解錠、音声操作などの機能が搭載されている。

 欧米の業界メディアからは「比類なき技術」「電動バイク革命の始まり」「ゲームチェンジャー」と賞賛されており、中国の電動二輪車の技術力が評価されている。

■世界中の消費者に恩恵を

 中国の電動二輪車は、充実した産業チェーンを背景に、海外市場でも競争力を発揮している。米国市場では85パーセント以上の電動アシスト自転車が中国製であり、イギリスでも関税の撤廃により、1台あたり200ポンド(約3万8136円)節約できる。

 ベトナムは世界第4位のバイク市場だが、以前は日本企業が市場を独占していた。しかし、中国の「雅迪」「台鈴(TAILG)」「綠源(Luyuan)」「九号(Ninebot E-Bike)」などのブランドが進出し、圧倒的なコストパフォーマンスでベトナムの消費者に受け入れられ、雅迪の年販売量は36パーセントも増加した。

 さらに、中国企業は東南アジア諸国連合(ASEAN)の電動化戦略に積極的に応じ、現地での製造・販売を強化している。2024年3月には「愛瑪(Aima)」がインドネシアで新工場を稼働させ、同年8月には「台鈴」がベトナムに4万平方メートルのスマート製造工場を開設した。

「雅迪」も1億5000万ドル(約225億6900万円)を投じ、インドネシアに年間生産能力300万台のスマート生産・研究開発拠点を設立し、東南アジア市場の開拓を加速している。

■アフリカでの「グリーン交通(環境に優しい交通手段)革命」を後押し

 一帯一路(Belt and Road)構想に乗り、アフリカ諸国でも電動バイクが広まりつつあり、中国の電動二輪車産業がその推進に大きく貢献している。

 2023年、アフリカの電動車両新興企業「Spiro」は中国企業と戦略的提携を結び、今後5年間で50万台の電動バイクをケニアやウガンダなどの新興市場で販売する計画を立てた。中国企業の支援を受けて、Spiroはアフリカ最大の電動車両メーカーに成長し、2024年には米誌「タイム(TIME)」の「世界で最も影響力のある100社」に選ばれた。

 タンザニアの「ガーディアン」紙も「中国企業は電動二輪車分野での技術力と経験を生かし、低価格で高品質な製品を提供してアフリカの『グリーン交通革命』に貢献している」と絶賛している。

■市場の拡大と今後の展望

 あるシンクタンクの予測によれば、海外における電動二輪車の需要は2026年に4630万台に達し、2029年には市場規模が440億ドル(約6兆6202億円)を超えるとされている。中国の「小電驢」は、この広大な新市場での飛躍を目指している。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News