【2月19日 AFP】男子テニス世界ランキング1位のヤニック・シナー(イタリア)が、薬物検査で陽性反応を示して3か月の出場停止処分を受けたことについて、世界反ドーピング機関(WADA)の担当者は18日、この件は「ドーピングとはほど遠い」と話し、処分が軽すぎるなどの批判に反論した。

シナーは昨年3月に禁止物質のクロステボールの陽性反応が2度検出されたことにつながったチームのミスについて「部分的な責任」を認め、処分を受け入れた。

シナーは担当の理学療法士が切り傷を治療するためにクロステボールを含んだスプレーを使用し、その後で自身にマッサージとスポーツセラピーを行ったことで、物質が体内に混入したと主張した。

テニスの不正監視団体ITIAは当初、シナーの説明を支持して処分を科さなかったが、WADAがこれを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴し、シナーは一時2年間の出場停止の可能性に直面していた。

最終的にシナーが3か月の処分で合意し、意図的な違反ではなかったと認めたWADAが訴えを取り下げたことでこの問題は終結したが、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)ら現役選手や元選手は裁定やシステムに疑問を呈している。

しかしWADAの法務担当であるロス・ベンツェル氏は、この制裁が「適切な」レベルだと考えている。

「これはドーピングとはほど遠いケースだ」とBBCスポーツに語ったベンツェル氏は、「われわれが受け取った科学的フィードバックによれば、この件が意図的なドーピングという可能性はない」と述べた。

「制裁が重すぎると考える人たちからのメッセージは届いている。選手にとって不公平だと声も、(処分が)十分ではないという声もあり、全員が納得しているわけではないのかもしれない。しかしそれはある意味で、処分のレベルが適切だったということを示唆しているかもいれない」

「こうした件は専門的、実務的に検討しており、市民や政治家の反応を気にして判断しているわけではない」(c)AFP