中国の若者が「中華美学」を日常に取り入れる
このニュースをシェア
【2月5日 東方新報】中国の著名な文化系動画クリエイター・李子柒(Li Ziqi)さんが、中国中央電視台(CCTV)が毎年放送する春節を祝う中国の年越し番組「2025年春節連歓晩会(春晩)」のオープニングビジュアルショー『迎福』に登場した。彼女は黄から青へとグラデーションするロングドレスをまとい、蝶をモチーフにしたデザインを取り入れ、華やかな衣装の中でさまざまな無形文化遺産の技術を見事に融合させ、伝統文化の美しさを表現した。
このドレスの染色は、湖北省(Hubei)の無形文化遺産である伝統的な植物染色技術の代表的伝承者・黄栄華(Huang Ronghua)氏と李子柒さんが共同で制作したものだ。黄色は植物の黄櫨(こうろ)から採取され、生命の絶え間ない循環を象徴し、青色は馬蘭(ばれん)という植物から抽出され、春の生命力を表している。この二色は、中国の伝統的な「五方正色」に基づいている。
黄栄華氏は「このドレスは多くの若者から注目を集めている」と話す。黄氏は日々、自身のSNSアカウントで無形文化遺産の技術を発信し、すでに10万人以上のフォロワーを獲得している。
舞台の外でも、中国の若者たちは「中華美学」を日常生活に取り入れ始めている。
湖北省武漢市(Wuhan)出身の楊帆(Yang Fan)さんは、絵を描くのが好きで、美術館巡りが趣味だ。彼女は伝統的なデザインをネイルアートに落とし込み、中国文化を指先で表現している。
2023年10月、楊帆さんは中国の伝統工芸「螺鈿(らでん)」を知り、興味を持った。そこで、自ら材料を購入し、螺鈿細工の技法を参考に、貝殻を磨いて薄片にし、蝶や花の形にカットしてネイルチップに埋め込んだ。
さらに、武漢博物館(Wuhan Museum)で展示されていた「青花纏枝蓮紋葫蘆瓶」にインスピレーションを受け、鉱物顔料で磁器のような白色を作り出し、毛筆で青花模様を描いた。数日かけて完成させたこのネイルデザインをSNSに投稿すると、多くの人から問い合わせがあり、海外企業からもコラボレーションのオファーが届いたという。
楊帆さんは、美術館や無形文化遺産の展示、時代劇ドラマを鑑賞する際に、文物や衣装、建築のディテールを写真に収め、デザインの参考にしている。伝統的な模様である万字紋や纏枝紋、蓮花紋、また螺鈿や漆芸などの技法を用いたネイルアートが、彼女の手によって生み出される。
「ネイルアートは欧米風のデザインやストーンを使ったものが主流だったので、中華風のデザインはニッチな存在だと思っていた。でも、意外と興味を持つ人が多い。年齢を重ねると、自然と伝統的なものに惹かれるようになるのかもしれない」と話す。
「Z世代」のデザイナー・馬暁月(Ma Xiaoyue)さんは、宋代の美学に強い関心を持っている。馬暁月さんは、宋代には茶屋が街中に広がり、お茶が優雅な生活の象徴だったことに着目し、武漢に宋代風の茶館を開くことを決めた。
馬暁月さんは、茶文化や宋代の絵画、庭園建築に関する書籍を研究し、茶館のデザインを手がけた。格子戸や海棠窗、「清明上河図」や「十八学士図」の掛け軸、さらに茶芸師による宋代の点茶(抹茶を泡立てる技法)など、細部まで宋代の風情が漂う空間に仕上げた。
馬暁月さんは「宋代の美は、芸術や建築だけではなく、生活の趣にある。文人たちは点茶、華道、香道、書画を『四大雅事』として楽しんでいた」と語る。そのため、茶館ではこれらの文化イベントを定期的に開催し、伝統衣装のレンタルも提供し、来店客が「古き良きスローライフ」を体験できるようにしている。
武漢紡織大学(Wuhan Textile University)の李正旺(Li Zhengwang)教授は「中国の伝統文化は、さまざまな形で若者の生活に浸透している」と指摘する。無形文化遺産への関心が高まる中、伝統文化のさらなる発掘が求められている。デジタル技術と観光・テクノロジー産業を融合させることで、より身近で体験しやすい形になり、伝統文化の新たな魅力を生み出すことができると語った。(c)東方新報/AFPBB News