【12月26日 AFP】ドイツで第2次世界大戦中にナチスが建設したトンネル網を、富裕層向けの避難壕(ひなんごう、シェルター)に改造する計画を進める不動産開発業者が、各方面から激しい非難を浴びている。ナチス政権下でトンネル建設に従事した囚人労働者の親族らはがく然としている。

第3次世界大戦を恐れる富裕層をターゲットにした新ビジネスは、「終末の日」のためのシェルターへの入場トークンとして「バンカーコイン」と呼ばれる暗号通貨を発行するとうたっている。

トンネルはベルリンの南西約200キロに位置するハルバーシュタット近郊の森の中にある。建設したのは、ブーヘンバルト強制収容所分所の収容者らだった。

13キロに及ぶトンネル網を掘るために、約7000人が強制労働を科され、その半数以上が命を落とした。ナチスは戦争後期、このトンネル内で航空機を製造していた。

近くのランゲンシュタイン・ツバイベルゲ強制収容所跡地には、犠牲者を追悼し、生存者をたたえる施設がある。フランス人のジャンルイ・ベルトランさん(72)の父、ルイ・ベルトランさんも戦争捕虜として収容されていた。

ルイ・ベルトランさんは戦後、数千人が命を落とした地下トンネルの周囲に「記憶の輪」となる小道を作ることを夢見ていたが、2013年に亡くなった。

「父は自分の青春の一部を置き去りにした」この収容所に埋葬されたとジャンルイさんはAFPに語った。その神聖な場所を「世界最大のプライベート壕」に変える計画には激怒しているという。