【11月20日 CNS】「店内が中国語の声で溢れていて、一瞬で中国にいるような錯覚を覚えた」。東京の「モンベル(montbell)」店舗を訪れた中国人観光客が驚いた様子で語ったように、この日本発のアウトドアブランドが中国で急速に人気を集めている。「日本の特産品」とまで揶揄されるほど、モンベルは今や始祖鳥マークの「アークテリクス(Arc'teryx)」に匹敵する注目度を誇り、多くの中国人消費者に支持されている。

 モンベルは、1975年に日本の登山家・辰野勇(Isamu Tatsuno)氏によって設立された。創業当初から「理想的なアウトドアウェアと装備」を目指し、高いコストパフォーマンス、軽量設計、快適な着心地を追求してきた。同ブランドは日本では比較的手頃な価格帯で、平均価格は300~500元(約6418~1万697円)程度。そのため「アウトドアのユニクロ(Uniqlo)」と呼ばれることもある。

 ところが、中国市場ではその立ち位置が一変し、やや高価格な「中産階級の定番ブランド」として定着している。現在、北京市、上海市、蘇州市(Suzhou)、寧波市(Ningbo)といった一線・二線都市に展開するモンベル店舗では、消費者の平均購入価格が1969元(約4万2125円)に達する。たとえば、高性能のジャケットが2599元(約5万5604円)、サンダルが589元(約1万2601円)、Tシャツが429元(約9178円)と、価格は日本より高めにもかかわらず、人気は高まり続けている。

 中国の消費者、モリー(Molly)さんは、自身のモンベルコーディネートをSNSで公開。免税価格の人気ジャケットがわずか400元(約8557円)で購入できたことに満足し、「最も高価な商品でも1500元(約3万円)以下だった」と話す。こうした高いコストパフォーマンスが、モンベルの大きな競争力となっている。

 特に人気が高いのは、モンベルの「レインダンサー」ジャケット。このジャケットには、防水・透湿・防風性能に優れるアメリカ製ゴアテックス(GORE-TEX)素材が使われている。日本での価格は約1400元(約2万8000円)、中国ではオンライン店舗で、1749元(約3万2091円)で販売されているが、それでもアークテリクスやサロモン(Salomon)といった他ブランドと比べると圧倒的に手頃だ。アークテリクスの同素材ジャケット「Beta SL」は5400元(約11万5530円)に達するため、モンベルは「始祖鳥の代替品」として認識されている。

 モンベルの魅力は、豊富な商品展開にもある。同ブランドはジャケットやTシャツだけでなく、フリーススカーフ、防寒ウェア、リュック、保温ボトル、さらには子ども用製品まで揃えている。また、一部店舗では伐採作業用の専門的な作業着も取り扱っているという。ブランドの公式サイトを見ると、登山、キャンプ、ランニング、釣り、スキーなど、あらゆるアウトドア活動に対応する幅広い製品ラインが確認できる。

 中国では、モンベルの商品を購入した多くの消費者が実店舗で試着写真を撮影し、SNS「小紅書(Red)」に投稿して「どの商品を買うべきか」他のユーザーに意見を求めている。このような投稿は大きな注目を集め、多くの関心や議論を呼び起こしている。SNS「小紅書」では「モンベル」の検索数が1億2000万回を超え、購入した商品の写真やコーディネートを投稿するユーザーが多い。

 例えば、中国人観光客が日本のモンベル店舗で帽子を購入する際に、どの色を選ぶべきかSNSで意見を募る投稿が話題を呼んだ。「カーキ色は山っぽくていいけど、黒は合わせやすい」「どれも素敵だけど、自分に似合うものを選ぶのが一番」というコメントが寄せられた。

 モンベルは、手頃な価格、幅広い商品展開、そしてSNSを活用した顧客とのつながりを武器に、中国市場でさらに存在感を増していくだろう。(c)CNS/JCM/AFPBB News